医師が把持しておくべき基本的スキルの中で、見落とされがちであるのが教育能力である。これは医療面接を通したコミュニケーション能力や、各種身体診察、検査等の技能教育が充実してきた現在も同様である。医師の教育能力(患者教育、同僚・後輩教育)を養成するための系統的プログラムは存在せず、さまざまな現場経験を通して、その人なりの教育能力を習得する。 また、現在の高等育の中心となっている能動的学修を推進するうえでも、教育能力は不可欠である。能動的学習とは、学生が主体的に課題に取り組むことにより、教育者から学ぶだけでなく、同輩や先輩・後輩、あるいは多職種者からも学び、教えあう能力を基盤としている。学生の教区能力を向上させることは、学習能力を向上させることでもある。また、年々深刻化する教育現場のマンパワー不足を改善するためにも、学生の教育能力向上は重要な意味を持つ。 本研究では、医学生の教育能力を、問題基盤型学習におけるテューターを行っている場面を用いて測定し、教育能力の向上や、教員と比較することによってその特性を把握するとともに、学生が教育に参加することによる教育運営上の効果を調査する。教育能力の測定には、客観的教育能力評価(Objective Structured Teaching Evaluation)で使用される評価内容をもとに作成し、問題基盤型学習にとどまらず、一般的な教育能力を評価するようつとめている。
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