研究実績の概要 |
平成29年度は、平成28年1~4月に行った「地域医師会員」1,021名と「内科学会関連学会の臓器・領域の専門医保持者」2,666名を対象とした“総合診療医”への転身に関する質問紙票による郵送調査(初年度に行った質的研究の結果と先行研究をふまえ作成し、「総合診療医の臨床内容」(25項目)、「総合診療医の特徴」(16項目)を含む)の分析を行った。 第一に、「総合診療医」のマンパワー確保に臓器・領域の専門医資格を有する内科医師は有用であり、“総合診療医”への転身意向がある医師の背景を明らかにした。「転身意向の医師」群で、「生活習慣病の治療と予防」(p<0.001)と「高齢者の合併症管理」(p=0.044)の認知度が高値であった。 第二に、日本の医師のライフサイクルとして、臓器・領域の専門医資格を有する内科医師が地域の「総合診療医」を志向して在宅医療を担うことが多く、「総合診療医」を志向する医師の在宅医療研修の認識を明らかにした。多重ロジスティックモデルで、年齢が1歳あがると在宅医療の重要性認識オッズが4%低下(調整オッズ0.96,95%信頼区間:0.93-0.99,p=0.002)し、「総合診療医の特徴」スコアが1点上昇するとオッズが6%増加した(調整オッズ1.06, 95%信頼区間:1.03-1.08,p< 0.0001)。 第三に、「総合診療医」については、診療所医師と病院医師の認識差がある可能性があり、この実態を明らかにした。「肺炎の入院適応」「禁煙教室開催」については病院医師で得点が高い傾向を認めた(all p<0.03)。「総合診療医の特徴」については、「一人の患者へ継続的に長く関わること」「心理的に気軽に利用することができること」、「患者に十分な説明を行い意思疎通を行うこと」がいずれも診療所医師において得点が高い傾向を認めた(all p<0.05)。
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