研究実績の概要 |
日本国内の代替医療系学会・研究会の投稿規程における利益相反(COI)等の取扱いについて、2017年3月時点で関連15学会・研究会で明記されていたのは、「COI申告書提出」3団体(20%)、「COIの論文明記」6団体(40%)、「臨床試験事前登録」4団体(27%)、「倫理委員会の承認」9団体(60%)、「インフォームドコンセント」8団体(53%)、であった。5項目すべてを満たしていたのは2団体(13%)のみであった。 鍼灸に関しては国内で実施されたランダム化比較試験(RCT)をシステマティックにサーチ・収集し、その質を Cochrane Risk of Biasツールで評価した。1970~2014年末までに145件のRCTが公表されており、このうちフルペーパーは86件であった。「患者の盲検化」「施術者の盲検化」「選択的アウトカム報告」においてHigh riskが最も多く(それぞれ52%、97%、97%)、「割付の隠蔽」「評価者の盲検化」「不完全なアウトカム」「その他のバイアス」においてUnclearが最も多く(それぞれ78%、67%、51%、58%)、「ランダム割付の方法」においてLow riskが最も多かった。「ランダム割付の方法」の内訳は封筒法49%, コンピューター45%, くじ引き6% であった。「不完全なアウトカム」「選択的アウトカム報告」のリスクが高かったのは ITT解析と臨床試験事前登録が浸透していないことによると思われる。 2016年に日本で開催された鍼灸の国際学会(WFAS Tokyo/Tsukuba 2016)に応募された329抄録を分析したところ、IRBまたは研究倫理委員会の承認の有無、およびCOIの開示を行っているものはごく少数であった。 結果的に鍼灸臨床研究が主たる評価対照となったが、COIマネージメントその他の研究倫理、そして本件と関連の強い出版バイアスやアウトカム報告の扱いに関するルール遵守について、当該領域における学術活動について未だ改善の余地があることが示唆された。
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