研究実績の概要 |
【1.医療資源の過剰使用の現状把握】我が国のマンモグラフィの受診率は20%代に留まっている。10万人あたりの検査装置は、CT10.2件、MRI4.7件、マンモグラフィ6.2件であった。10万人あたりの検査件数は、CT22,464件、MRI10,627件、マンモグラフィ7,983件であった。CTが過剰供給される一方で、マンモグラフィの供給は必ずしも充足していない可能性が示唆された。また、2012年にピロリ菌保険適応となって以来、導入前と比べヘリコバクターピロリ感染関連検査は2倍に増加し、胃炎・十二指腸炎の有病率は45-64歳で増加していた。 【2.がん検診における「過剰診断」推計方法】がん検診の過剰診断の推計方法には、無作為化比較対照試験、コホート研究、罹患率・死亡率の時系列研究、モデル評価が用いられているが、算出方法は標準化されていない。マンモグラフィによる乳がん検診は8件行われているが、このうち上記に該当するのは2件であり、その結果からマンモグラフィの過剰診断は10~20%と推計されている(Marmot MG,BJC:2013)。一方、罹患率・死亡率の時系列研究、モデル評価ではその結果は5~50%と大きな開きがあった。 【3.胃内視鏡検診における「過剰診断」の推計】胃がん年齢調整死亡率は、胃内視鏡検診を行っている新潟市に比べ、胃内視鏡検診を行っていない新潟市以外の市町村で減少割合が大であった。進行度1胃がん年齢調整罹患率(/10万)は、新潟市では108.9から103.7に、新潟市以外の市町村では90.3から87.7に減少したが、進行度2-4胃がん年齢調整罹患率は両群共にほぼ同等、横ばいであった。新潟市では他の市町村に比べ、進行度1の罹患率が高く、死亡率減少の割合が大きかった。この結果では、内視鏡検診の効果と過剰診断の識別が困難なことから、医療資源算出には至らなかった。
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