海外の評価尺度を参考に、新聞・週刊誌・ネットメディアの医療健康記事を題材に、評価手法、指標の設定について妥当性、一致率および医療関係者の間との認識の相違について明らかにすることで、医療報道の質向上に資する手法の構築を行った。28年度は記事を用いた評価作業および評価軸についての集中的な議論を踏まえて、評価手法の改訂を行い評価結果の公表に向けた検討を行った。 (1)医療健康報道の評価手法の確立 例として新たなメカニズムによるがん治療薬(免疫チェックポイント阻害薬)の治療効果と費用など社会的な視点での評価軸、薬剤のリスク・ベネフィット、科学的根拠に基づくがん検診、臨床試験のエビデンスの伝え方について、報道記事を用いて40人ほどの評価者による議論を行った。「新規性(話題の新規性を適切に言及している)」についての評価は一致して高かった一方で、「弊害(副作用・コスト)」「代替性」「あおり・病気づくり」については評価が分かれる結果となった。新たな治療を患者に適応する臨床試験や、健康な市民を対象とするがん検診や予防など、読み手によって求められる基準が異なること、医療保険制度や診療報酬など社会的な視点を取り入れることの必要性が明らかとなった。 (2)医療健康情報発信とメディアリテラシー向上のために必要な要素の検討 医療健康報道に関する信頼性、期待に関するアンケートを継続的に実施した。よりよい記事を書いたり、報道を読んだりするときのチェックリストや簡略版が試作され、中学校でのパイロット授業(29年3月開催)でも国語科のメディアリテラシーをテーマで実施され、参加した生徒からは医療や健康を扱う記事の読み方や受け止め方、リテラシーの必要性など得るものが多い好意的な感想が多く寄せられた。こうした取り組みは教育や研修におけるヘルスコミュニケーション、リテラシー教育にも実践可能と考えられた。
|