研究実績の概要 |
危険ドラッグの成分で覚せい剤と化学構造が類似しており、ドーパミン再取り込み阻害作用を有する合成カチノンであるPyrovaleroneの長期に及ぶ脳神経系への影響(ドーパミン神経の変性)を明らかにするため、以下の実験を行った。 C57BL6マウスにPyrovalerone 30 or 60 mg/kg (i.p., 2 hr interval, 4 times)を投与し3日後に線条体、前頭皮質および海馬の脳部位を採取した。また、覚せい剤によるドーパミン神経毒性には体温上昇が関与することが示唆されていることから、合成カチノンの神経毒性における体温上昇の役割を明らかにするため、直腸温を2時間毎に測定した。 コントロールである生理食塩水投与群と比較して、Pyrovalerone 30 mg/kgでは薬物投与1, 3, 5, 7時間後、Pyrovalerone 60 mg/kgでは薬物投与3, 5, 7時間後における直腸温は有意に高かった。また、ドーパミン神経変性の有無を明らかにするため、Pyrovalerone 30 mg/kgの前頭皮質において、ドーパミン神経のマーカーであるチロシンヒドロキシラーゼの発現量をウェスタンブロット法により検討したところ、生理食塩水投与群と比較してその発現量に差は認められなかった。今後、線条体や海馬といった他の脳部位およびPyrovalerone 60 mg/kg投与群において同様な検討を行い、Pyrovaleroneの長期に及ぶ脳神経系への影響(ドーパミン神経変性の有無)を明らかにする予定である。
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