研究課題
IGF-1受容体阻害薬の耐性乳癌細胞株ではTYRO3のリン酸化が亢進していた。TYRO3は治療標的としては注目されていなかったが、siRNAを用いてTYRO3の発現を低下させたところ耐性株のみならず親株でも増殖が抑制された。各種乳癌細胞株で検討したところ、luminal-typeの細胞株で増殖抑制が観察され、ERK1/2、S6KやSTAT3、cyclin D1のリン酸化も低下していた。これらより、TYRO3が乳がんの治療標的となる可能性が高いと考えた。本研究では乳癌におけるTYRO3の臨床的意義を明確にするため、乳癌の手術検体でTRYO3発現をRNA in situ hybridization (ISH)技術を用いたRNAscopeを用いて検討した。加えてTYRO3関連分子であるGas6の発現も検討した。現在までに乳癌5例で解析を終了し、luminal Aでは腫瘍細胞にTYRO3とGas6のいずれもが発現していた。一方、liminal Bでは発現がみられなかった。HER2陽性乳癌の2例のうち1例では発現がみられず、もう1例ではTYRO3もGas6も発現していたがluminal Aに比べると発現は弱かった。Triple negativeでは腫瘍細胞には発現はみられなかった。この結果は我々が先行研究で明らかにした乳癌細胞株におけるTYRO3発現抑制による増殖抑制効果がluminal typeで顕著でありHER2 typeでは弱かったことと合致する所見であり、我々の仮説を裏付けるものであった。加えて肺がんでもTYRO3の発現を予備的に解析し、肺腺癌6例中2例でTYRO3が高発現し、さらに1例で弱いながらも発現していることを見出した。これは肺癌でもTYRO3抑制効果を今後検討する研究に発展するものである。今後は本研究を発展させ乳癌の予後因子である各種臨床病理学的特徴とTYRO3発現との関連を検討し、予後予測因子としてのTYRO3の意義を検討することにより、TYRO3を標的とした薬物治療の開発を最終的に目指す。
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