研究課題/領域番号 |
26460632
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
松井 敏史 杏林大学, 医学部, 准教授 (50333802)
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研究分担者 |
樋口 進 独立行政法人国立病院機構(久里浜医療センター臨床研究部), その他部局等, その他 (40156576)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | alcoholics / Wernicke / Korsakoff / 海馬 / パペッツ回路 / voxel-based morphometry |
研究実績の概要 |
久里浜医療センターに入院するアルコール症患者127名をエントリーし、組入れ基準該当者113名を更にウェルニッケコルサコフ症候群15名、ウェルニッケ脳症を伴わない認知機能低下群40名、非低下群58名に分け、そのMRI画像を健常対照群60名と比較した。MRIは、T1強調3次元 volumetric magnetization prepared rapid gradient (MPRAGE)撮像を行い、voxel-based morphometry (VBM)とstatistical parametric mapping software (SPM)による、画像の半自動的処理による皮質領域の抽出と解析者のバイアスの極力入らない解析を用いた。 今回の予備実験で、アルコール依存症では広範に皮質領域・白質領域の萎縮が認められ、年齢とその体積は逆相関した。アルコールそのものが関与する領域として、前頭葉・大脳縦裂・シルビウス裂・小脳の萎縮が顕著であった。一方、認知機能低下に関与する領域としては、海馬・海馬傍回の萎縮が特徴的で、視床・第3脳室の萎縮が認知機能非低下群に比し増強していた。ウェルニッケコルサコフ症候群のMRI画像は認知機能低下群のMRI画像と同様のであり、明らかなウェルニッケ脳症がなくともアルコール依存症者の認知機能低下は潜行性に進む可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MRI解析は、MATLAB 6.5.1以降のバージョンを用い、SPM2, 5および8をそれぞれ試み、ワークステーションの最適化を模索した。現在のところ個別の脳皮質の体積(AALアトラスを使用)は、MATLAB 6.5.1+SPM2 & 5で、グループ間の萎縮部位の同定は、MATLAB 6.5.1+SPM2とMATLAB 13b + SPM 8で行っている。今回脳画像の標準化、平滑化などパラメータ設定を行い、VBMとして妥当性のある結果が得られたと思われる。上記の研究は現在論文にまとめ、Matsui T, et al. Involvement of Limbic-diencephalic Circuits in Alcoholic Japanese men with Persistent amnesia – an MRI Study by Voxel-based Morphometric Analysisの論文名で、Alcoholism: Clinical and Experimental Researchに投稿した(平成27年4月現在査読中)。
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今後の研究の推進方策 |
本研究のもうひとつの目的は、遺伝子のアルコール依存症者の脳画像に与える影響である。候補遺伝子として、アセトアルデヒド脱水素酵素2(ALDH2)およびアルコール脱水素酵素1B(ADH1B)に注目し遺伝子多型の同定を行っている。特に、アルコール代謝産物のうち毒性の強いアセトアルデヒドの分解を担うのがALDH2であり、このALDH2多型はALDH2活性に影響する。日本人を含むアジア人にはこのALDH2多型の欠損型の保有者が多く(日本人の40%程度)、酒を飲むといわゆる“赤ら顔”になるアルコールに弱い体質を有する。対象者の各遺伝子の同定はほぼ完了している。平成27年度以降は、この両遺伝子多型と特定の脳領域の萎縮との関連を調査する予定である。
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