研究課題
平成28年度では、次の4項目において新知見を見出した。(1)EGFR阻害剤による皮脂腺萎縮機構:毛包・脂腺系へ移行したEGFR阻害剤のゲフィチニブとエルロチニブはヒト皮脂腺代替モデルのハムスター脂腺細胞において細胞増殖を抑制したことから、両薬剤の副作用の乾燥肌は脂腺細胞の増殖抑制に起因した皮脂腺萎縮が関わるものと推察された。(2)前駆ヒト脂腺細胞の樹立:採取したヒト背部皮膚組織(冲中)より脂腺細胞マーカーを発現し、継代可能かつ皮脂産生能を有する前駆脂腺細胞(2ロット)を樹立した。また本細胞においてホスファチジン酸は新規皮脂産生促進因子であること、抗菌薬のナジフロキサシンが皮脂産生抑制作用を示すことを見出した。(3)B-Raf阻害剤による皮脂産生調節:悪性黒色腫治療薬であるB-Raf阻害剤のベムラフェニブは、インスリン誘導性の皮脂産生を増強、逆に男性ホルモンにより増加した皮脂産生を抑制することを見出した。そのメカニズムについては今後の検討課題である。(4)細胞外マトリックス(ECM)代謝異常制御方法の開発:分子標的薬投与による皮膚障害(乾燥、潰瘍など)には皮膚ECM代謝異常が関与する。本年度はカロテノイド色素のβクリプトキサン、生薬由来モノテルペンのp-cymeneによるECM破壊抑制作用を見出した。また、ハイドロゲルを活用した抗菌性創傷被膜素材の開発に携わった。すなわち、両天然物や抗菌性ハイドロゲルは分子標的薬による皮膚障害の軽減・改善にも有効性を示すものと期待される。以上、本年度の研究成果よりEGFR阻害剤による皮脂腺萎縮機構、ざ瘡様皮疹の分子機構解明に有用な日本人由来前駆脂腺細胞の樹立、さらに薬剤性皮膚障害の予防・治療薬としての新規天然物由来物質や医療応用素材を国内外で発見した薬学的かつ臨床上有用なエビデンスである。
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