研究実績の概要 |
緒言:本邦の糖尿病罹患患者は増加の一途をたどっているが若年健常者の耐糖能を評価した報告はほとんどない。本研究では若年健常成人を対象に75g経口糖負荷試験(75gOGTT)を行い、血糖変動パターンに基づき対象を分類して脂質代謝関連項目との比較検討を行った。方法:対象者は503名(男性309名,女性194名)、年齢:24.3±2.7歳、血糖値の変動パターンI:負荷後30分の血糖が初めて負荷前の血糖を下回る、II:負荷後60分の血糖が初めて負荷前の血糖を下回る、III:負荷後120分の血糖が初めて負荷前の血糖を下回る、IV:負荷後の血糖値が負荷前の血糖を下回らないものにわけて解析した。結果:75gOGTTの評価をできた487名中、470名が正常耐糖能、17名が境界型(耐糖能異常(IGT)16名、空腹時血糖異常(IFG)1名)であった。血糖値変動パターンによる解析ではI、II、III、IV群の人数は20、84、124、226名であった。負荷前血糖値、負荷前インスリン値、HbA1c値、HOMA-Rは群間に有意差を認めなかった一方、負荷後血糖値、負荷後インスリン値、インスリン分泌指数およびHDL-Cについては群間で有意差を認めた。考察:米国の非糖尿病者を対象に本研究と同様な方法で75gOGTTの血糖変動パターンごとに経過観察をした先行研究では血糖低下までの時間が長いIII、IVの群の新規糖尿病発症リスクが高かった。本研究でも血糖が低下するまでの時間が長いほどインスリン分泌量の増加やインスリン感受性の低下が認められた。このような群ではHDL-Cが有意に低かった。本研究で若年健常者でも血糖変動パターンの違いによりHDL-Cが異なり、耐糖能障害が顕在化する前段階から脂質代謝に影響が認められることが明らかになった。
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