研究課題
抗カルバミル化蛋白抗体(抗CarP抗体)はカルバミル化ウシ胎仔血清(FCS)に対する抗体であり、関節リウマチ(RA)患者血清に認められる。今回はその対応抗原の同定を試み、臨床的意義を検討した。抗CarP抗体のWestern blotにみられる主なbandはカルバミル化アルブミンと分子量が似ていることから、カルバミル化ヒトアルブミン(CarALB)を抗原として抗CarP抗体陽性RA患者血清を用いてWesternblotを行ったところ、共通のバンドが認められた。また、抗CarP抗体高値陽性患者血清8検体を用いて抗CarP抗体ELISAを行い、CarALBによる吸収試験を行ったところ、CarALB濃度依存性に抗CarP抗体価の低下がみられ、CarALBが抗CarP抗体の対応抗原のひとつであることが示された。続いて、抗CarALB抗体の抗CCP抗体陽性、陰性RA患者での陽性率をELSIAにて検討した。抗CarALB抗体は抗CCP抗体陽性RAの44.6%で陽性となり、陰性RAでは18.3%であった(健常者では3.6%)。カルバミル化蛋白とシトルリン化蛋白は構造が極めて類似していることから、シトルリン化アルブミンに対する抗体価もELSIAで検討したが、CCP抗体陽性RAの19.7%、CCP抗体陰性RAの10.3%と明らかに抗CarALB抗体よりも陽性率が低かった。他の膠原病、リウマチ性疾患での抗CarP抗体および抗CarALB抗体の陽性率を検討したが、いずれも10-30%程度の陽性率がみられ、膠原病、リウマチ性疾患とRAの鑑別には有用ではなかった。最後にカルバミル化を生体内で引き起こすのは好中球に含まれるミエロペルオキシダーゼ(MPO)であることから、RA血清中のMPO濃度を測定したところ、抗CarALB抗体陽性RAでは陰性RAよりも血清MPO濃度が有意に高いこともわかった。
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Rheumatology (Oxford)
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10.1093/rheumatology/kex088