牛などの反芻獣に慢性下痢を繰り返す致死性の細菌感染症であるヨーネ病には、ワクチンや治療薬がないため、法に基づく定期検査による感染摘発と淘汰が行われている。定期検査では、血清を用いた免疫学的検査によるスクリーニングを行い、その陽性検体については、ヨーネ菌特異遺伝子を検出するリアルタイムPCR法での結果を確定診断としている。現行のスクリーニングに用いられている菌粗抽出抗原は、生活環境や自然環境細菌であるマイコバクテリア属近縁種と交差反応によって擬陽性を出しやすい問題点がある。この点について改善するためには、より特異性の高い抗原を用いての迅速測定法の開発が望ましいと考えられる。 本年度は、遺伝子データベースを利用したバイオインフォマティクスによってヨーネ菌の遺伝子由来アミノ酸配列群から菌特異的遺伝子群を選出し、さらに全ゲノム配列データベース情報に対するアミノ酸配列の相同性比較解析を行うことで候補遺伝子の選抜を行った。選抜された候補遺伝子については、網羅的に大腸菌発現系で組換えタンパク発現を試み、発現確認の出来た可溶性タンパクに対し免疫牛血清を用いたウエスタンブロット法による反応性検討を行ったところ抗血清中の抗体が陽性反応を示すタンパクを複数得ることができた。このうちの1種については、発現条件ならびに複数のクロマトグラフィー担体を用いた精製法の最適化検討を行い、高純度の精製タンパクを得ることができた。
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