研究課題
難病に指定されている自己免疫性肝炎やクローン病など自己免疫性消化器疾患患者数は増加傾向にあるが、診断に有用なバイオマーカーは存在しない。我々は、血中抗programmed cell death(PD)-1抗体が自己免疫性肝炎患者の血中に存在することを発見している。PD-1は活性化リンパ球表面に発現する補助刺激分子であり、抗原提示細胞上に発現されるリガンドのPD-L1と反応することでリンパ球の活性を低下させたり活性化リンパ球をアポトーシス(細胞死)へ誘導したりする。抗PD-1抗体は、PD-1とPD-L1の反応をブロックすることでリンパ球の異常な活性化に関与すると考えられている。本研究の目的は、血中抗PD-1抗体値の測定が自己免疫性消化器疾患の診断に有用であるかを検証することである。自己免疫性肝炎患者における血中抗PD-1抗体:自己免疫性肝炎20例で血中抗PD-1抗体を測定した。7例(35%)で陽性であった。陽性例では、陰性例に比べてステロイド剤投与にも拘らず肝機能正常化までに6か月以上を要する症例や免疫抑制剤アザチオプリン投与を必要とする症例など治療抵抗性を示す症例の頻度が有意に高かった。IgG4関連疾患患者における血中抗PD-1抗体:IgG4関連疾患には、抗核抗体陽性や高ガンマグロブリン血症など自己免疫性肝炎に類似した検査結果を示す症例が存在する。IgG4関連疾患21例で血中抗PD-1抗体値を測定したが、全例で陰性であった。以上より、血中抗PD-1抗体値の測定は、自己免疫性肝炎とIgG4関連疾患の鑑別に有用である。今後、ヒト血中に存在する抗PD-1抗体のエピトープ決定を行い、日常臨床で利用可能な測定キットの開発につなげていく予定である。
2: おおむね順調に進展している
血中抗PD-1抗体値の測定が自己免疫性肝炎の診断に有用であることが示された
エピトープマッピングによりヒト血中に存在する抗PD-1抗体のエピトープを決定し、日常臨床で利用できる検査キットの開発を進めていく。
本研究で使用した研究用試薬及び機器の価格改定に伴い差額が生じた。
次年度も引き続き本研究を継続する予定であり、対象患者の血中抗PD-1抗体値測定に必要な測定キットの購入、エピトープマッピングによりヒト血中に存在する抗PD-1抗体のエピトープ決定、日常臨床で利用できる検査キットの開発に使用する予定である。
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