研究実績の概要 |
薬剤耐性の緑膿菌とアシネトバクター臨床分離菌株について、多段階の耐性化と遺伝子変異の相互関係、耐性遺伝子獲得機構について調査した。また、それに基づく検査診断法の開発および多剤耐性化回避法の確立を検討することを目的とした。 新たに134株の緑膿菌を用いて、薬剤排出ポンプにはreal time RT-PCR法、β-barrel assembly machinery (BAM)複合体には、ウエスタンブロット法とreal time RT-PCR法を用いて発現状況を確認した。薬剤耐性緑膿菌(2剤耐性以上)には、薬剤排出ポンプの発現亢進が大きく関与していることがわかった。逆に、薬剤排出ポンプが関与しない臨床分離株は稀であった。また、mexCDは感受性菌でも発現が亢進しているなど、過去の報告と異なり耐性菌との差が認められなかった。臨床上抗菌薬耐性に関与する主要ポンプのうちmexCD以外のmexAB, mexEF, mexXYのいずれかであった。薬剤排出ポンプの構成蛋白質の気質となるペプチドを供給する BAM複合体で、BamA~BamEの5つの発現を標準株(PAO1)と比較検討した結果、抗菌薬耐性菌では発現がわずかに増加していたが、当初の予想に反してイムノクロマト法を最終目標とする簡易迅速検査に利用できるほどの著明な差は認められなかった。 多剤耐性を含む新規アシネトバクター91株については、特定の遺伝子型(ST208とST219)の菌株のみが院内アウトブレイクに関与していた。これら2株は耐性遺伝子の発現、薬剤排出ポンプの動向が全く同じであった。 薬剤耐性の緑膿菌とアシネトバクターにおいて、いずれも薬剤排出ポンプの発現亢進が認められ、この発現のモニタリングは感染制御に役立つことが示唆された。
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