研究課題/領域番号 |
26460658
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
馬目 佳信 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (30219539)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 甲状腺乳頭がん / モノクローナル抗体 / 診断システム |
研究実績の概要 |
本研究のゴールは甲状腺乳頭がんが産生する抗原に対する抗体を利用して温度応答性磁気ナノビーズを利用した方法および金コロイドを用いたイムノクロマト法を開発し、簡便、迅速に甲状腺乳頭がん抗原を血液から検出するシステムを確立することである。本年度、抗体の精製を行い、温度応答性磁気ナノビーズへの結合を行った。 1.単クローン抗体の精製。 精製は臨床に応用することを想定してマウス腹水からの大量回収や血清培地を用いず無血清のコスメディウムを使用して抗体を産生するハイブリドーマを培養し上清を得た。上清からの抗体回収についてアフィニティーカラム、サイズカラム等を用いて検討し、最終的にIgM及びIgYによるトラッピングカラムで抗体を精製した。ウエスタンブロット法で精製した抗体を調べ活性の低下がないことを確認した。 2.抗体の標識法の検討。 抗原と結合した単クローン抗体の検出には標識された二次抗体を用いる方法が一般的である。しかし本研究では二次抗体の影響を回避するため単クローン抗体に直接ナノビーズ等を標識することとした。基本的には抗体のアミノ基を用いてN-ヒドロキシスクシンイミド活性エステル法を用いて抗体にペルオキシダーゼ、ビオチン等を結合させ結合条件を確立した。 3.温度応答性磁気ナノビーズ等への結合。 得られた抗体をストレプトアビジン標識の温度応答性磁気ナノビーズと反応させその後、カラムを用いてビーズを精製、活性を抗原との反応性により確認した。これにより次年度、量の異なる抗原間での反応性の比較が可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、本年度、以降の実験に差し支えないよう十分量の抗体を確保することと磁気ナノビーズとイムノクロマト用金コロイドへの結合条件を明らかにすることであった。このうち抗体の精製法を確立し、次年度の実験に差支えない量の精製抗体(3mg)を得ることができた。また磁気ナノビーズとの結合条件を明らかにすることができた。抗体量については全ての年度で必要な抗体まで精製は行わなかったが培養法と精製条件が定まったのでいつでも3か月程度で精製抗体を得ることができるようになっている。また金コロイドへの結合については本年度では行わなかったが抗体の修飾法が決まったためイムノクロマトを作成する段階で結合条件を確認できる状態となっている。以上のことから現在までの達成度はおおむね順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は抗体を結合させたナノビーズおよび金コロイドが実際の抗原の検出に利用できるかどうかを調べ、安定した結合条件を確立する予定である。これまでの臨床サンプルを用いた試験では抗原の検出系としてサンドイッチ法を利用した酵素抗体法(いわゆるサンドイッチELISA法)を用いてきたが抗体のクラスがIgMであるため標識率や抗体の安定性などに問題が生じていた。スクリーニングのためには、感度を保ちながら検出の迅速化を図ることや検査のコストを低く抑えることに加え再現性が大きな要素になる。安定した標識ができるようになればそれ自体がナノビーズおよびイムノクロマトでの実際の測定に寄与することとなる。また抗体の標識率が向上するためサンドイッチ法を用いた酵素抗体法自体の精度も上がるため、この方法との対比も容易になり研究計画全体の質を上げることも容易になる。
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