研究課題/領域番号 |
26460663
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研究機関 | 天理医療大学 |
研究代表者 |
池本 正生 天理医療大学, 医療学部, 教授 (80144385)
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研究分担者 |
戸田 好信 天理医療大学, 医療学部, 教授 (10444465)
竹田 真由 岐阜医療科学大学, 保健科学部, 講師 (00423054) [辞退]
仲瀬 裕志 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (60362498)
岡田 光貴 天理医療大学, 医療学部, 助手 (80747569)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | Macrophage / Endocytosis / S100 proteins / IBD / neutrophil / nuclear / cytokines / inhibition |
研究実績の概要 |
平成26年4月からラットS100A8トランスジェニックラット(S100A8-Tg)の樹立を目指して研究を開始し,平成26年12月に,1匹の組換えラット(F0,雌)を樹立することに成功した.以降,このF0とSDラット(雄)と交配し,S100A8-Tgを得た.その後,S100A8-Tgを用いてS100タンパク質の免疫学的機能について急性肝障害モデルラットを用いて解析したところ,Wistarラット(WT)においては明らかに肝組織障害が誘導され,その周囲に活性化マクロファージが多数集積していた.注目されるのは,そのマクロファージにはS100A9が優位に発現していた.それに対して,S100A8-Tgでは,肝組織における障害は観察されず,またマクロファージも散在的に分布していた.このことは,S100A8がなんらかの機序により肝組織における急性炎症反応,ひいては急性肝障害を抑制していることを意味していると思われる.そこで,研究代表者はS100A8の炎症抑制効果はアミノ酸配列に基づく立体構造の違いに起因していると考え,S100A8及びS100A9のアミノ酸配列を一部組み替えたリコンビナントS100タンパク質を構築し,アミノ酸デャイレツの重要性を分子レベルで解明する研究に取り組んでいる. その一方で,S100タンパク質(S100A8及びS100A9)がマクロファージの核内に移行する事実を初めて明らかにした.現在,マクロファージから分泌されるS100タンパク質,とくにS100A9及び各種サイトカインに対するmRNAをバイオマーカーとして捉え,本タンパク質及びリコンビナントS100タンパク質の免疫学的意義を明らかにする実験に取り組んでいる.最終年度では,これらのタンパク質がDSS誘導潰瘍性大腸炎の発症を抑制するかどうかをin vivoの系で明らかにしたいと考えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
S100A8トランスジェニックラットの樹立に成功したこと,マクロファージによってS100タンパク質がエンドサイトーシスによって核内まで取り込まれている事実を視覚的に捉えることに成功したこと,マクロファージをS100タンパク質で刺激後,炎症性及び抗炎症性サイトカインに対するmRNAを測定したところ,一部の炎症性サイトカインmRNAの発現が有意に抑制されている事実を確認できたことが主な理由である.
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今後の研究の推進方策 |
現在,S100タンパク質のアミノ酸配列を一部組み替えたリコンビナントS100タンパク質(MIKO-1, MIKO-2, MIKO-3, MIKO-4)をすでに作製済みである.これらの組み替えタンパク質を用いて,最初にin vitroの系でマクロファージの免疫学的機能への影響をS100A8, S100A9及び各種サイトカインのmRNAを指標としてそれらの変動を見極めた上で,潰瘍性大腸炎の治療に有効かどうかを明らかにし,新しい治療法に向けた可能性を探っていきたい.具体的には,組み替えタンパク質を大腸菌から精製し,それをDSS誘導潰瘍性大腸炎ラットの大腸組織に注入し潰瘍性大腸炎の発症が抑制されるのかどうか,同時に大腸組織内マクロファージにおけるS100タンパク質の発現状況を,生化学的,免疫学的,組織学的観点から明らかにする予定である.なお,必要に応じて開発したS100A8-Tgを用いて同様に検討し,S100タンパク質,とくにS100A8の機能的役割を明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画が順調に進んだため,今年度中に使用する必要がなくなり,次年度に繰り越す必要が生じたため.
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次年度使用額の使用計画 |
S100A8トランスジェニックラットの凍結胚作製費用の一部に当てる.
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