研究課題/領域番号 |
26460667
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
松下 一之 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90344994)
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研究分担者 |
野村 文夫 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80164739)
星野 忠次 千葉大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (90257220)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | T細胞性急性リンパ性白血病 / c-myc遺伝子 / 臓器浸潤 / ノックアウトマウス / 機能解析 |
研究実績の概要 |
【目的・背景】FUSE-binding protein (FBP)-interacting repressor (FIR) はc-myc遺伝子転写抑制因子である。癌細胞ではFIRの転写抑制部位(exon2)のスプライング変異体(FIRΔexon2)により正常型FIRの機能が阻害されてc-mycの転写増大が認められる。大腸癌、肝細胞癌組織ではFIRΔexon2/ FIR mRNA比の増大が報告されている。急性T細胞性リンパ芽球性白血病 (T-ALL) ではc-Mycの発現増大が認められるがT-ALLにおけるFIRの機能は殆ど未解明である。本研究ではT-ALLの発症におけるFIRの働きを調べる目的 でFIRヘテロノックアウトマウス(FIR+/-)を作製した。さらにTP53遺伝子ヘテロノックアウトマウス(TP53+/-)(ホモは不妊)と交配してFIR+/-TP53-/-マウスを作製してT-ALLの病態への関与を調べた。FIRのハプロ不全がT-ALLの発症にどのように関与しているのかを調べ新規診断マーカーと治療法の開発を目指すことを目的とした。 【考察】FIRのスプライシングはDNA損傷とc-myc調節に関連することを示唆した。c-myc転写抑制因子FIRのハプロ不全を伴うFIR+/- TP53-/-マウスは少なくとも一つは部分的にc-myc/c-Myc増大を伴うNotchシグナル経路の活性化でT-ALL/リンパ腫の増悪を促進したと考えられた。本研究ではFIRドミネガによる発現制御変化をFIR haplosufficiencyをモデルに用いて解析し、FIRの選択的スプライシングは大腸癌発症だけではなく白血病発症にも関与する可能性を示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的であるc-myc遺伝子転写抑制因FIRのヘテロノックアウトマウスの作製に成功した。そのため当初の予定通りに、T細胞性急性リンパ性白血病発症モデルの臓器浸潤モデルを作成することができた。FIR遺伝子の新規機能を論文報告することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今回の検討では、T-ALL/リンパ腫発症FIR+/- TP53-/-マウスのT-ALL/胸腺リンパ腫について検討を行ったが、臓器浸潤細胞との相違について詳細な解析が行われていない。 1.FIR+/- TP53-/-マウスから得られる臓器浸潤細胞(末梢血、骨髄、脾臓)について比較検討を行う。2.FIRはc-myc転写抑制因子の他の機能については未だ未解明のままである。ChIP-seqを行いFIR およびFIRΔexon2の機能解析を行う。3.c-Mycタンパク質のリン酸化の機序に対するFIR およびFIRΔexon2の関与。4.c-Mycタンパク質の安定性に関わるFBW7の機能とFIR およびFIRΔexon2の相互作用の有無。5.FIR およびFIRΔexon2のタンパク質全長の結晶構造。6.FIR およびFIRΔexon2の診断・治療への臨床応用。などを行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定していた試薬について想定よりも価格が抑えられたことにより残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の計画に沿って使用していく。特にFIRのスプライシングが細胞内活動にどのような影響を与えるのかを具体的に調べるために、FIRおよびFIRΔexon2-FLAGの安定発現株を用いたクロマチン免疫沈降(ChIP)を中心に行う。
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