研究課題
子宮頸部の腺系病変におけるムチン、Trefoil factor family蛋白(TFF)、組織特異的転写因子の発現に着目して、子宮頸部腺系病変の診断および検査診断法への応用を検討した。ホルマリン固定パラフィン包埋された子宮頸部分葉状頸管腺過形成(LEGH)(16例)、頸部上皮内腺癌(AIS)(24例)と頸部浸潤腺癌(IAC)(29例)を対象として、以下のマーカーの発現を免疫組織化学的に検討した。TFF1(胃表層粘液細胞)、TFF2(胃腺粘液細胞)、GlcNAcα1→4Galβ→R(HIK1083抗体で認識される糖鎖、胃腺粘液細胞)、およびPAX8(ミュラー管起源の上皮細胞)。PAX8に関しては胃癌(20例)の染色も行った。また、子宮頸部擦過液につき、ELISA法によるTFF2の定量測定とHIK1083ラテックス凝集反応(目視半定量)を比較検討した。正常子宮頸管上皮はTFF1、TFF2、GlcNAcα1→4Galβ→Rは陰性であった。LEGH,AIS,IACにおけるTFF1の発現頻度は、100/75/82.8%、TFF2の発現頻度は100/37.5/44.8%、HIK1083反応性ムチンの発現頻度は100/37.5/44.8%であった。TFF1はHIK1083陰性の細胞にも発現がみられた。一方、TFF2陽性細胞の局在はHIK1083陽性細胞の局在に一致していた。TFF1とTFF2は腺管内の分泌物にも陽性像がみられた。TFF2定量値はHIK1083ラテックス高凝集度群で有意な上昇がみられた。LEGHや頸部腺癌におけるTFF1およびTFF2の産生および分泌が確認されたことから、頸管泌液中のTFF測定の子宮頸部腺系病変の診断への応用が可能と考える。PAX8は胃癌症例には陰性であったが、胃型形質の子宮頸部病変には高頻度に発現していた。両者の組織発生は異なっているものと推測される。
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