研究課題/領域番号 |
26460674
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
村手 隆 中部大学, 生命健康科学部, 教授 (30239537)
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研究分担者 |
高木 明 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30135371)
小嶋 哲人 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40161913)
鈴木 元 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (80236017)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | スフィンゴ脂質代謝 / 代謝酵素遺伝子発現調節 / SPHK2 / 血清除去 / ACDase / 前立腺癌細胞株 / アンドロジェン / USP2 |
研究実績の概要 |
1)スフィンゴ脂質代謝酵素の一つであり解析が進んでいないsphingosin ekinase 2 (SPHK2) について、大腸癌細胞株を用い、血清除去、低酸素下、グルコース除去などのストレス化におけるSPHK2の発現変化をmRNA、タンパク、酵素活性レベルにて解析した。結果、血清除去下においてSPHK2のmRNA、タンパクおよび酵素活性の増加を認めた。血清添加と血清除去下の大腸癌細胞株HCT116を比較し、細胞内シグナル伝達経路およびSPHK2転写の増加を引き起こす転写因子について解析した。解析の結果、速やかで一過性のJNK経路、更には下流のCREB転写因子が血清除去下でのSPHK2発現増加に関与している可能性が示された。CERB遺伝子の過剰発現およびsiRNA実験により、CREBの血清除去下のSPHK2発現増加の関与を証明した。またこのSPHK2の細胞の運命決定への影響について、意外な事に既報の細胞増殖停止としての役割よりも、ストレス下での細胞生存因子としての役割が明らかになった。 2)前立腺癌細胞においては、スフィンゴ脂質代謝 酵素酸性セラミダーゼ (ACDase) の高発現が報告されているが、その発現機序については明らかにされていない。我々は、アンドロジェン反応性細胞株LNCaPと非感受性株PC3, DU-145を用いて、アンドロジェンによるACDase発現レベルの調節機序の解明を試みた。アンドロジェンによるACDaseの発現増加は、LNCaP細胞においてのみ認められ、アンドロジェンによるACDase発現レベルの調節機序は翻訳後調節と考えられ、プロテアゾーム阻害剤MG132を用いた実験から、プロテアゾームによるタンパク分解がその調節の主体であると考えられ、詳細な解析の結果、脱ユビキチン化酵素USP2のアンドロジェンによる調節が調節機序の本体である事が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成27年度には研究成果の実績で紹介した (1) Mizutani et al. J Cell Biochem 116:2227-2238, 2015, (2) Mizutani et al. J Biochem 158:309-319, 2015 の他に、低酸素状態における大腸がん細胞株LS174Tの解析によって、これまで報告の無いヘキソシルセラミドの著明な変化をLS-MS/MSの解析にて明らかにした (Tanaka et al. Glycoconj J. 32:615-623, 2015)。 さらに共同研究により、心筋細胞の急性虚血性変化時のC1q/TNF-related protein 1の機能を明らかにした (Yuasa et al. FASEB J 30:1065-1075, 2016)。我々は特にS1Pの動態についてLC-MS/MSによる詳細な解析を行ってこの研究に貢献した。また、共同研究者の鈴木らは、肺がん臨床検体の網羅的解析からセラミド合成酵素6(Cers6)の高発現が癌の浸潤や転移に正の相関がある事を初めて報告した (Suzukiet al. J Clin Invest 126:254-265, 2016)。
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今後の研究の推進方策 |
現在は、植物のファイトケミカルであるり赤ワイン等の含まれ健康食品としての認識が高まっているレスベラトロールの高濃度での抗がん作用に着目し、その殺細胞効果について研究を継続している。その最初の結果は既に論文化の運びである (Mizutani et al. Biochem Biophys Res Commun 70:851-856, 2016)。さらにこの方向性を継続し、抗がん剤多剤耐性細胞株への効果ならびにレスベラトロール多量体 バチカノールCの詳細な解析を行っている。この多量体はレスベラトロールに比してさらに強力な殺細胞効果を少なくとも白血病細胞株に対しては認めており、さらに固形腫瘍細胞株にどのような効果を有するかを鋭意検討中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度に前任地名古屋大学医学部保健学科から中部大学生命健康科学部生命医科学科に着任し、教育、研究の準備に時間がかかり、実際の実験を開始するのが遅れたため。
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次年度使用額の使用計画 |
下半期からは実験も軌道にのり、投稿論文も順調に受理され、次の実験計画がたてやすい状況となった。これまでの実験計画の延長として、予定している実験もあり、平成28年度はそれらを合わせて支給された研究費を、全額使用する予定である。
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