研究課題
本年度は新しい幹細胞・癌幹細胞解析技術であるFACS-mQを臨床現場で使用可能とするため、プロトコールのいくつかの改良を試みた。1.蛍光染色後、FACSで細胞を採取するまでの保存条件の検討臨床現場では細胞を染色した後、すぐにFACSで解析できないケースもありえる。従って、蛍光染色後の保存条件について検討した。以前のプロトコールでは細胞をパラフォルムアルデヒドで固定して保存していたが、この条件ではRNAの回収率が低下することが判明し、保存液としてDithiothreitolを含む緩衝液を選択した。これによって染色後概ね24時間までの保存が可能となり、またFlow Cytometryの解析結果にも大きな変化が出ないことがわかった。また細胞をパラフォルムアルデヒドで固定する操作が省かれたため、RNAの回収率が向上した。2.RNA定量法の検出限界の評価とcDNAあるいはRNA増幅法による定量法の検討通常の定量RT-PCR法にてFACS-mQで解析後の細胞内のRNAを定量したところ、beta Actin, NKX2.1など、中~高レベルで発現しているmRNAを安定して定量するためには最低100個程度の細胞を回収する必要があることがわかった。引き続きwhole transcriptome amplification(WTA) とT7 promoterによるリニア増幅法を使用して、mRNAの定量の検出感度が向上するかどうか検討した。100個レベルの細胞ではWTAでは検出感度は通常のRT-PCRよりむしろ感度が低下した。リニア増幅法では通常のRT-PCR法に比較して僅かに感度が向上したが、1回の増幅で多数の遺伝子を計測することが可能となるため、今後FACS-mQでのRNA定量解析ではリニア増幅法を第一に使用することが好ましいと判断した。
2: おおむね順調に進展している
FACS--mQを臨床現場で使用可能とするため、問題点の改良と、細胞採取法の確立、採取後の解析法について詳細に検討し、実用的なプロトコールの確立に成功した。
甲状腺組織を収集し、組織を酵素処理して単一細胞を採取、今までに確立したプロトコールを使用してFACS-mQに使用可能な検体として固定・凍結保存する(細胞発現ライブラリー)。この細胞発現ライブラリーを使用して、FACS-mQのトライアル的な解析を開始し、臨床像を反映するような情報が得られるかどうか解析する。また、興味ある細胞分画の発見に成功した場合は、FACSにて細胞を回収して遺伝子発現プロフィールを解析して細胞群の性質の同定を進める。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 3件) 備考 (1件)
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