研究課題/領域番号 |
26460683
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研究機関 | 岡山県立大学 |
研究代表者 |
木本 真順美 岡山県立大学, 保健福祉学部, 教授 (40108866)
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研究分担者 |
山本 登志子(鈴木登志子) 岡山県立大学, 保健福祉学部, 准教授 (60301313)
山下 広美 岡山県立大学, 保健福祉学部, 教授 (70254563)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ADMA / 翻訳後修飾 / アルギニンメチル化タンパク質 / 40Sリボソームタンパク質サブユニット2 / RPS2 / NOS阻害剤 / 糖尿病 |
研究実績の概要 |
初年度は、計画に沿ってアルギニンメチル(ADMA)化されたRPS2が体内ADMA濃度の主な制御系であるかどうかを検討し、以下の結果を得た。 (1)Wistar系およびSD系ラットを用い、組織中の遊離型ADMAならびにタンパク結合型ADMAを当研究室で開発した競合阻害ELISA法により測定した。異なる2系統ラットにおいて、これらの存在量は類似した傾向を示した。結合型ADMAは脾臓、胸腺、膵臓において約500 nmol/g wet weightと、他の組織に比べて高濃度に認められた。その組織間における存在パターンは、組織粗抽出液中におけるRPS2ならびにADMA化されたRPS2の発現量によく合致していた。一方、組織中の遊離型ADMA濃度/結合型ADMA濃度(%)は、脳、肝臓、膵臓において0.5%前後であったが、心臓、胸腺、脾臓においては1.5%前後と上昇し、腎臓においては5.8%の高値を示した。組織間におけるこのような数値の相違は、遊離型ADMAの分解酵素であるDDAH活性の差によって説明できる。我々が既に報告しているように、腎臓、脳、肝臓、膵臓においてはDDAH活性レベルが高く、心臓、胸腺、脾臓はDDAHの発現がきわめて低いことは知られている。以上の結果は、RPS2のADMA化が組織中の結合型ADMA濃度を規定する主要因となることを示唆するとともに、体内の遊離型ADMAの濃度制御にはDDAHが重要な鍵を握っていることが確認された。 (2)RPS2のADMA化を触媒する酵素はPRMT3であるとされている。良好な市販抗体が入手し難いためにヒトPRMT3 に対するモノクローナル抗体の作製を試み、ヒトPRMT3に対するC2B6 (IgG2a) と G1H12 (IgG1) の2種の抗体を得た。前者はELISAや免疫沈降に、後者はウエスタンブロットに適した抗体であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度にRPS2のADMA化メカニズムならびにその生理的機能との係わりを明らかにするために、本酵素反応を触媒するとされているPRMT3の遺伝子ノックダウンHepG2細胞の作製を試みたが、部分的なPRMT3の発現抑制しか起こらず、当初の研究目標の一部は達成できていない。
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今後の研究の推進方策 |
まず、前年度の達成できなかった実験項目について、以下に示したように、方法を再検討し実施する。 (1)PRMT3ノックダウン細胞においてもPRMT1の代償作用によってRPS2のADMA化が抑制されないことも考えられるのでPRMT3のみならずPRMT1、そしてこれら両者のダブルノックダウンしたHepG2細胞を作製し、解析に用いる。ノックダウンの方法についても、遺伝子抑制した安定株を得るためにsiRNAに変えてshRNAの導入を行う。この方法で作製した細胞のRPS2タンパク質のADMA化率について分析するとともにADMA化率の変動が細胞機能に与える影響についても解析する。たとえば、ノックダウン細胞においてインスリン応答性を解析し、RPS2のADMA化とインスリン抵抗性との関連性を見いだす。 (2)本研究計画立案時には、2年目の課題として『脳組織におけるADMA化タンパク質の代謝系の解析』を挙げていたが、初年度の研究過程において、膵臓におけるRPS2ならびにADMA化RPS2の発現が顕著であることが判明した。そこで、当初の計画を変更し、膵臓をターゲットとしたGoto-Kakizaki 非肥満糖尿病モデルラットを用い、ADMA化RPS2の代謝変動と糖尿病態との関連性を見いだす。(1)はin vitro実験、(2)はin vivo実験と位置づけられる。 (3)RPS2のADMA化、そしてADMA化RPS2の分解を含む代謝回転についての詳細は明らかにされていない。これら酵素反応系の実体を把握するためには、それぞれの基質の準備が必要である。まず、組換え型RPS2の大腸菌における発現系を構築し、組換えタンパク質として大量精製する。ついで、PRMT1あるいはPRMT3(いずれも、組換えタンパク質として得ている)ならびにS-アデノシルメチオニン(補基質)により、ADMA化RPS2を合成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
「次年度使用額」は392,937円となった。この研究費の生じた状況としては、「現在までの達成度」の項で述べたとおり、平成26年度に計画していた実験がやや遅れぎみであったことによる。すなわち、2つ目の課題:タンパク質アルギニンメチル化酵素(PRMT1およびPRMT3)をノックダウンした筋管細胞におけるインスリン応答実験まで進めることができず、それにかかる費用分が次年度に持ち越される結果となった。
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次年度使用額の使用計画 |
「今後の研究の推進方策」の項にも述べたように、初年度の研究過程において得られた結果から、実験方法ならびに研究方針を少し見直した。前年度に達成できなかった実験項目に再度挑戦し、さらに、非肥満性糖尿病モデルラット(Goto-Kakizaki ラット)を用いたin vivo実験を新たに計画に加える予定である。上記モデルラットは、21,000円/匹ときわめて高価であるため、平成27年度の交付申請額120万円(直接経費)と合わせた総額1,592,937円の多くは物品費に充てることとなる。しかし、研究2年目でもあることから、成果の一部を国際会議等で発表する計画もある。以上のことを考慮した支出内訳の概要を次に示す。 物品費:1,142,937円、旅費:30万円(国内;10万円、海外;20万円)、謝金:15万円
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