研究課題/領域番号 |
26460693
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
右田 啓介 福岡大学, 薬学部, 准教授 (10352262)
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研究分担者 |
上野 伸哉 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00312158) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 慢性疼痛 / 帯状回 / 左右差 / 錐体細胞 / 抑制性神経活動 |
研究実績の概要 |
神経障害性疼痛モデル動物の脳内fMRI像では、片側の末梢神経障害にも関わらず右左両側の帯状回が活性化しており、両側の帯状回が活性化状態になることが報告されている。この両側帯状回の活性化状態が、疼痛の慢性化を強固なものにし、下降性疼痛抑制系の破綻を来している可能性が考えられる。しかしながら、どのようにして片側の坐骨神経損傷により左右両側の帯状回が活性化状態になるのか。そもそも、左右の神経細胞の活動に違いがあるのか。また、左右の帯状回から視床や下降性疼痛抑制系の神経核である中脳水道周囲灰白質への神経投射は互いを相殺する関係にあるのかについては明らかにされていない。昨年度は、坐骨神経部分結紮モデルマウスを作製し、左右の帯状回のどのようなタンパク質の発現変化が起きているかについて、二次元電気泳動法を用いて解析を行った。その結果、タンパク質の分離は良くなかったが、コラプシン反応媒介タンパク質などの発現が変化している傾向が見られた。このタンパク質は神経の軸索伸長などに関与しており、末梢神経が障害を受けた場合に脳内の帯状回の神経細胞がタンパク質レベルで変化を起こしていることが示唆された。一方、疼痛はいろいろなストレスを受けることで感受性が変化する。そこで、恐怖条件付けモデル動物や恐怖記憶消去モデルにおける左右帯状回の神経活動に差があるのかについて、電気生理学的手法を用いて検討した。その結果、恐怖記憶消去モデル動物では、左右帯状回II-III層の錐体細胞におけるGABAA受容体を介したトニック電流が僅かではあるが増強していた。しかしながら、左右差はなかった。このことから、帯状回では、ストレスを消去する際に左右帯状回II-III層の神経細胞が興奮しにくい環境を作っていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
神経障害性疼痛における左右帯状回の役割について検討を行っている。昨年度は、左側の坐骨神経結紮による左右半球それぞれの帯状回におけるタンパク質発現量の変化について二次元電気泳動法を用いて検討し、コラプシン反応媒介タンパク質の発現量が異なる傾向にあるという結果を得た。しかしながら、タンパク質の分離の精度が良くないために確証が持てる結果を得たとは判断しにくい状態であった。また、左右の腰髄についてもタンパク質の発現変化についての検討では、これまでに坐骨神経を結紮した慢性疼痛モデルにおける腰髄ではミグログリアの増加やP2X4受容体の発現量の増加が知られているため、二次元電気泳動の実験でも同様の結果が得られるかを確認した。その結果、結紮側でのプロテインホスファターゼの減少は見られたが、すでに知られているP2X4受容体などの変化は捉えることができなかった。このような昨年度の結果を改善するために、現在も条件検討中である。一方、本年度は左右帯状回の神経活動についても検討を行った。今回は、ストレスを受けたモデル動物とそれを消去したモデルでの左右帯状回II-III層の錐体細胞における抑制性神経応答を解析した。その結果、左右間での変化は見られなかったが、ストレス消去時にGABAA受容体を介するトニック電流の増強が見られ、帯状回II-III層で興奮が起きにくい状態に変化している可能性が示唆された。しかしながら、計画しているsiRNAを用いての実験まで届いておらず、研究の進行状況は遅れ気味と言わざるをえない。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、二次元電気泳動による左側の坐骨神経結紮マウスを用いた左右帯状回や腰髄におけるタンパク質発現量の変化を精度よく検出する。その後、変化のあったタンパク質の抗体を用いて、ウエスタンブロット法によりどれくらいの量的変化があるかについて測定を行う。また、検出されたタンパク質が帯状回のシナプスにおいてどのような役割を持っているのかを検討するために、スライスパッチクランプ法を用いて神経細胞の活動に対する影響を記録する。一方、モデル動物における左右帯状回の神経活動の変化について、電気刺激による応答記録など詳細な検討を加えていく予定である。さらに、左右半球の帯状回からの神経投射について蛍光トレーサーを用いて検討することを当初から計画しているので、この研究についても遂行していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在論文を投稿しているが、審査中で掲載が決定していないため、掲載にかかる費用の一部が差額分として発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度の差額分は、投稿中の論文の掲載が決定された時に使用され、次年度の研究経費は従来の計画通り電気生理学的解析や分子生物学的解析で使用する。
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