熱により痛み刺激を1℃だけ短時間に増減することにより、痛み感覚の大幅な減少を来す減少をオフセット鎮痛と呼ぶ。慢性疼痛患者と健康被験者を対象に、熱刺激装置PATHWAYとマルチモーダル機能的磁気共鳴画像法を用いて、その脳内メカニズムと慢性疼痛脳内機構を考察した。 熱痛み刺激増加時間を延長するとオフセット鎮痛がより強くなった。慢性疼痛患者ではオフセット鎮痛が弱かったが、この延長によりオフセット鎮痛が増大した。オフセット鎮痛時には下行性疼痛抑制系と報酬系に関わる脳部位が働き、これが慢性疼痛患者では減弱することを示した。慢性疼痛患者では前帯状皮質と前島皮質が萎縮し、これが報酬系回路の減弱と関連した。
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