研究実績の概要 |
モルヒネの脊髄くも膜下腔投与は、少量でも鎮痛効果が得られるが、一方、過鎮静や呼吸抑制などが生じることがある。また、選択的κオピオイド受容体作動薬のナルフラフィンは血液透析患者の経口鎮痒薬として臨床応用されているが、鎮痒効果の反面、不眠・眠気などの副作用があり、それ以上の用量を必要とする鎮痛目的には適しないことが明らかとなっている。今年度は、マウスにおいて少量モルヒネとナルフラフィンの混合液を脊髄くも膜下腔投与し、ナルフラフィンがモルヒネによる鎮痛・鎮静効果に及ぼす影響を検討した。C57BL/6系雄マウス各群6匹を用いた。(実験1)モルヒネ 0.1, 0.3, 1.0 nmol、ナルフラフィン 10, 30, 100 pmol、モルヒネ 0.1 nmol + ナルフラフィン10 pmol、または生理食塩液 5 μlを脊髄くも膜下腔投与前、投与後150分間マウスの尾を48℃の温水につけて反応までの潜時を測定した。(実験2)モルヒネ 0.1, 0.3, 1.0 nmol、ナルフラフィン 100 pmol、モルヒネ 0.3 nmol + ナルフラフィン 10, 30, 100 pmolまたは生理食塩液 5 μlを脊髄くも膜下腔投与後60分間ビデオ撮影し、鎮静レベルを3段階に分け経時的な鎮静スコアを解析した。(実験1) 生理食塩液群に比べモルヒネ、ナルフラフィン群ともに用量依存性に鎮痛効果が得られた。生理食塩液群に比べモルヒネ/ナルフラフィン混合群はモルヒネ単独群より2倍以上、鎮痛効果時間が延長した。(実験2) モルヒネ群は生理食塩液群に比べ用量依存性に強く鎮静された。ナルフラフィン群は鎮静状態が生じなかった。モルヒネ/ナルフラフィン混合群はモルヒネ単独群と比較し鎮静レベルに変化はなかった。マウスの脊髄レベルにおいてナルフラフィンは鎮静レベルを増悪させることなくモルヒネによる鎮痛効果時間を延長させた。
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