研究実績の概要 |
関節疾患でみられる関節内アシドーシスに注目し、酸感知機構をターゲットにした関節疾患の新規治療法の開発を目指している。本年度は、その基盤となる関節痛モデルと基本的評価法の確立を目標に研究を実施した。 まず、関節痛モデルにおける末梢神経および脊髄レベルでの酸感知機構の役割について検討を行った。評価法として、疼痛行動、神経組織の免疫組織学的検討、および薬理学的検討を行った。pH4.0の酸を関節内に繰り返し投与すると、投与後28日以上持続し、両側性に拡がる痛覚過敏を惹起することができた。 再現性高く痛覚過敏を惹起できた投与後14日目にL4髄節に相当する脊髄を切り出し、転写因子リン酸化CREBの免疫染色を行った。その結果、脊髄後角細胞にリン酸化CREBの発現が両側性に増加していることを確認した。 脊髄後根神経節細胞における酸感知機構の免疫染色は未だ定量評価できるまでに至らず、来年度に抗原賦活法を併用して再検討する予定である。 薬理学的な検討においては、代表的な酸感知機構ASIC1, ASIC3, TRPV1のアンタゴニストであるPcTx1, APETx2, BCTCを局所投与して、その鎮痛効果を評価した。結果、2回目の酸投与前にASIC3アンタゴニストを投与した群に有意な鎮痛効果を認め、持続する両側性の痛覚過敏の発生は抑制された。 来年度は、脊髄後根神経節細胞に加えて関節構成体における酸感知機構の発現に関する検討を行う予定である。
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