関節疾患でみられる関節内アシドーシスに注目し、酸感知機構をターゲットにした関節疾患の新規治療法の開発を目指している。過去2年間で、①ラット膝関節内にpH4.0の酸を繰り返し投与することで関節内組織障害を伴わない持続性関節痛モデルを確立、②single nerve recording法によって酸感知機構(ASIC3)が疼痛発生機序に深く関与していることを明らかにした。 本年度は、本モデルを用いて疼痛行動を詳細に評価し、脊髄レベルでの疼痛発生機序について検討した。結果、本モデルにみられる関節痛は、関節の圧痛閾値の低下よりも足底の痛覚過敏が目立ち、さらにその変化は両側性に生じていることが明らかになった。脊髄の免疫染色の結果、後角細胞の転写因子リン酸化CREBの発現、ミクログリアのマーカーであるIba1の発現、アストロサイトのマーカーであるGFAPの発現がそれぞれ両側性に増加していたことから、反対側にまで影響する強い中枢感作が本モデルの疼痛の主因と考えられた。当初予定していた脊髄後根神経節における酸感知機構の免疫染色に関しては、様々な抗原賦活法を試みたが定量評価できるに至らなかった。
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