研究課題/領域番号 |
26460699
|
研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
平川 奈緒美 佐賀大学, 医学部, 准教授 (20173221)
|
研究分担者 |
八坂 敏一 佐賀大学, 医学部, 助教 (20568365) [辞退]
吉田 裕樹 佐賀大学, 医学部, 教授 (40260715)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | IL-27 / ケラチノサイト / 痛覚過敏 |
研究実績の概要 |
平成27年度は引き続き、感覚過敏の発生メカニズムを解明するために以下の実験を行った。 実験① IL-27KOマウスの神経系に解剖学的・組織学的異常がないか、特に痛みに関わる神経核や脊髄グリア細胞などに変化がないかどうかを免疫組織化学法により調べたところ、IL-27KOマウスに明らかな異常を認めなかった。 実験② IL-27KOマウスにおいて,炎症性サイトカインおよび疼痛関連分子の遺伝子やタンパク質の発現に変化がないかを,リアルタイムPCR法により調べた。その結果、IL-27KOマウスとWTとの間に明らかな違いを認めなかった。 実験③ in Situ ハイブリダイゼーション法や免疫組織化学染色法などにより,IL-27の産生細胞やWSX-1受容体の発現細胞を同定する研究を行った。その結果、WSX-1受容体はケラチノサイトに発現していることが分かった。 以上より、IL-27KOマウスは、神経系の解剖学的・組織学的な異常を認めず、炎症性サイトカインや疼痛関連分子のする遺伝子およびタンパク質の発現においてもWTと明らかな違いはなかった。現時点ではIL-27KOマウスの痛覚過敏のメカニズムは明らかになっていないが、近年ケラチノサイトが痛みと関連することが報告されているため、WSX-1がケラチノサイトに発現していることとIL-27KOマウスの痛覚過敏との関連を疑っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度は「研究業績の概要」に記した結果と知見が得られた。また、IL-27KOマウスの痛覚過敏の発生メカニズムを解明し、鎮痛薬開発への基盤を作るために、現在以下の実験を行っている。実験① IL-27リガンドKOマウスにrIL-27を投与し、機械刺激に対する過敏が改善するかどうかを調べている。 実験② 後根神経節細胞にWSX-1が発現しているかどうかを、in Situ ハイブリダイゼーション法や免疫組織化学染色法により調べている。実験② 健常者の血中IL-27および電流知覚閾値を測定し、血中IL-27濃度と電流刺激に対する感受性に関連性があるかどうかを調べている。電流知覚閾値はニプロ社のPain Vision○Rを用いて測定している。 これらの実験は終盤にさしかかっており、順調に進行しているといえる。 しかし、申請書に記した「IL-27の免疫抑制シグナルを模倣する分子化合物を探索する」については、脊髄や神経細胞などの痛みに直接関係する細胞におけるIL-27関連分子の発現がいまだ確認されていないため、計画が進行していない。
|
今後の研究の推進方策 |
平成26~27年度に行った皮膚―神経標本からの単一神経記録の実験結果から、一時は後根神経節細胞の急性単離標本を用いたカルシウムイメージングを行う必要がなくなったと考えていたが、皮膚がない状態での後根神経節細胞の反応性を調べるためにカルシウムイメージングを行うこととなった。平成27年度後期から実験準備を進めており、平成28年度に入り準備が整ったため、近日中に実験を開始する予定である。これまでの研究結果から、IL-27KOの痛覚過敏には皮膚のケラチノサイトか後根神経節細胞が関連していると推測している。 また、鎮痛薬開発への基盤を作るために、末梢神経障害性疼痛患者の治療前後の血中IL-27濃度と痛み度を測定し、IL-27濃度と痛み度に関連性があるかどうかを調べる。痛み度はニプロ社のPain Vision○Rを用いて測定する。
|