H28年度は引き続き、IL-27KOマウスの感覚過敏の発生メカニズムを解明し鎮痛薬開発への基盤を作るために実験を行った。 実験①EBI3KOマウスにrIL-27を投与し機械刺激を与えたところ、投与2時間後に過敏が改善した。実験②後根神経節やケラチノサイトにWSX-1が発現しているかどうかを、in Situハイブリダイゼーション法により調べたところ、いずれの部位においてもWSX-1は発現していないか、検出感度以下であった。実験③野生型、WSX-1KOおよびp28KOマウスの後根神経節細胞の急性単離標本をカプサイシンで刺激し、カルシウムイメージングによりニューロンの反応性を調べたところ、野生型とKOマウスの応答性に差はなく、既知の行動実験の結果を支持する結果であった。実験④神経皮膚標本からの単一神経記録を行った。3系統のIL-27KOマウスの機械刺激に対する反応は野生型と比べて大きく、EBI3KOマウスにrIL-27を前投与すると反応が小さくなった。これらは既知の行動実験の結果を支持する。実験⑤WTマウスにIL-27中和抗体を腹腔内および皮下投与したところ、機械刺激に対する閾値が低下した。実験⑥健常者の安静時血中IL-27値測定および電流知覚閾値測定を行ったが、これらの値に相関関係は認められなかった。そのため、当初予定していた末梢神経障害性疼痛患者の治療前後の血中IL-27値測定と痛み度測定の研究を延期した。 IL-27の免疫抑制シグナルを模倣する分子化合物を探索する計画については、痛みにかかわる細胞やケラチノサイトにおけるIL-27関連分子の発現を確認できなかったため、計画は進行しなかった。 3年間の研究結果から、IL-27は生理的状況において痛みの感度を調節していること、IL-27は痛み抑制効果があり、末梢組織中で痛みに関わる細胞に直接的に働いていることが示唆された。
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