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2014 年度 実施状況報告書

疼痛疾患モデル一次性感覚ニューロンに認められるミトコンドリア異常の解析

研究課題

研究課題/領域番号 26460706
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

柴田 護  慶應義塾大学, 医学部, 講師 (60286466)

研究分担者 清水 利彦  慶應義塾大学, 医学部, 講師 (40265799)
研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2018-03-31
キーワード神経障害性疼痛 / TRPV1 / オートファジー / ミトファジー / ミトコンドリア / 侵害性刺激
研究実績の概要

本研究の目的は、代表的な疼痛疾患動物モデルを作成し、一次感覚ニューロン (primary sensory neuron: PSN)のミトコンドリアにどのような変化が引き起こされているかを解析することである。本研究の実施方法であるが、培養細胞のアッセイを用いた系と齧歯類頭痛モデルの系を用いた実験に二分できる。基礎的なデータを得るためにも、侵害性刺激の受容に関与するTRPV1 (transient receptor potential vanilloid subfamily, member 1)を安定的に発現するPC12クローンを用いた研究を先行させた。生細胞のミトコンドリアの染色には、MitoTracker Red CMXRosを用いた。TRPV1発現は、GFPの融合蛋白としてベクターを作成してあるので、蛍光顕微鏡で確認できる。TRPV1のアゴニストであるカプサイシン (10 microM)を培養液に加えたところ、3時間後にミトコンドリア数はvehicle (0.1% DMSO)を加えた群に比較して減少を認めた。カプサイシンの効果がTRPV1を介した反応であることを確認するために、TRPV1の阻害薬であるカプサゼピン (50 M)を前投与したところ、ミトコンドリア数の減少は阻害された。一方、カプサイシンを24時間作用させた細胞では、ミトコンドリア数はvehicle群と比較して有意な変化を呈さなかった。これは、ミトコンドリアの新生が生じたためと推察している。動物自験では、侵害受容性疼痛モデルを作成し、三叉神経節標本で、電子顕微鏡観察を行った。その結果、オートファジーの誘導が2日後より観察された。空胞の一部にミトコンドリアも認められた。6日後には、オートファジー誘導は鎮静化していたが、小型のミトコンドリアが目立ち、ミトコンドリア新生が生じているものと推察された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

TRPV1の刺激が、ミトコンドリアの減少とそれに引き続く新生を引き起こす可能性を、培養細胞と実験動物の両者の系で明らかに出来たことが主な進展と言える。この結果の意義は、TRPV1の刺激がミトコンドリアのターンオーバーを引き起こすことを示したことであり、さらにオートファジーが重要な作用を果たすことを確認できたことである。
また、動物実験では、モデルの適切性を確認することが重要であった。侵害受容性疼痛のモデルとして、三叉神経支配領域に10 mMカプサイシンを含む脱脂綿を30分間投与することで、局所の皮膚発赤を引き起こし、さらにvon Frey hairによる痛覚過敏と、Orofacial Pain Assessment Device (OPAD)で熱疼痛刺激の閾値低下を確認することが出来た。その上で、前述の三叉神経節ニューロンでのオートファジー誘導とミトコンドリア新生が確認できたが、今後はオートファジー誘導を阻害した際に、三叉神経節ニューロンの形態や疼痛閾値にどのような影響が生じるのかを解析していくことが重要と考えられる。

今後の研究の推進方策

①細胞実験
TRPV1の刺激によるミトコンドリア数の変化にオートファジーが関与するのであれば、オートファジー実行に関与する蛋白質のどれが重要な働きをしていくのか同定する必要がある。そのためには、Atg5, Atg7, Beclin1/Atg6などのsiRNAを行って、TRPV1によるオートファジー誘導に阻害がかかるかを確認する。また、我々はBeclin1に関しては、野生型のみならずドミナントネガティブな作用を有する変異体を発現するベクターも有しているため、これらの蛋白質の過剰発現がオートファジー誘導に如何なる影響を与えるかについても検討したい。
②動物実験
当初の計画に従って、炎症性疼痛疾患モデル・神経障害性疼痛疾患モデル・片頭痛モデルの作成し、電子顕微鏡観察を行う。また、神経系細胞でのみAtg5をノックアウトするマウスを用いて、TRPV1刺激が疼痛閾値に如何なる影響を与えるのかに関しても解析予定である。

次年度使用額が生じた理由

効率的な調達の結果として残金が生じた。

次年度使用額の使用計画

本年度の細胞実験および動物実験に使用する試薬や動物の購入に充当する予定である。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 5件)

  • [雑誌論文] Clinical utility of triptans in the management of headache attributed to dural arteriovenous fistula involving the cavernous sinus.2015

    • 著者名/発表者名
      39.Osaka M, Shibata M#, Oki K, Yamada S, Kufukibara K, Akiyama T, Yoshida K, Suzuki N. (#corresponding author)
    • 雑誌名

      J Neurol Sci

      巻: 349 ページ: 260-261

    • DOI

      10.1016/j.jns.2015.01.011.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Temporal profiles of high-mobility group box 1 expression levels after cortical spreading depression in mice.2015

    • 著者名/発表者名
      Takizawa T, Shibata M, Kayama Y, Toriumi H, Ebine T, Koh A, Shimizu T, Suzuki.
    • 雑誌名

      Cephalalgia

      巻: 印刷中 ページ: 印刷中

    • DOI

      DOI: 10.1177/0333102415580100/cep.sagepub.com

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] 専門医部会 シリーズ: 患者の言葉・身体所見を読み解く 頭痛~病歴と画像診断から診断を考える~.2014

    • 著者名/発表者名
      柴田 護
    • 雑誌名

      日本内科学会雑誌

      巻: 103 ページ: 2841-2844

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 薬剤の使用過多による頭痛 (薬物乱用頭痛, MOH)の病態生理と診断.2014

    • 著者名/発表者名
      柴田 護
    • 雑誌名

      神経内科

      巻: 81 ページ: 417-422

  • [学会発表] 片頭痛の新たな主役たち 片頭痛慢性化2014

    • 著者名/発表者名
      柴田 護
    • 学会等名
      第42回日本頭痛学会総会
    • 発表場所
      山口県下関市海峡メッセ
    • 年月日
      2014-11-14
    • 招待講演
  • [学会発表] 片頭痛の病態生理2014

    • 著者名/発表者名
      柴田 護
    • 学会等名
      Headache Master School Japan Tokyo
    • 発表場所
      東京 都市センター
    • 年月日
      2014-09-07
    • 招待講演
  • [学会発表] TACsの治療2014

    • 著者名/発表者名
      柴田 護
    • 学会等名
      Headache Master School Japan Osaka
    • 発表場所
      大阪 吉本ビル
    • 年月日
      2014-07-20
    • 招待講演
  • [学会発表] 頭痛のanatomy2014

    • 著者名/発表者名
      柴田 護
    • 学会等名
      Headache Master School Japan Osaka
    • 発表場所
      大阪 吉本ビル
    • 年月日
      2014-07-20
    • 招待講演
  • [学会発表] Differential cellular localization of antioxidant enzymes in the trigeminal ganglion.2014

    • 著者名/発表者名
      Shibata M, Sato H, Shimizu T, Shibata S, Toriumi H, Ebine T, Kuroi T, Iwashita T, Funakubo M, Kayama Y, Akazawa C, Wajima K, Nakagawa T, Okano H, Suzuki N.
    • 学会等名
      Pan-Asian/Pan-American Program, American Headache Society 2014, June 2014, Los Angeles.
    • 発表場所
      Hyatt Regency Century Plaza, Los Angeles, USA
    • 年月日
      2014-06-26
    • 招待講演

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公開日: 2016-05-27  

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