研究実績の概要 |
熱疼痛刺激やカプサイシン刺激で活性化されるTRPV1を刺激した際にミトコンドリアにいかなる影響を与えるかを検討した。TRPV1を発現するPC12細胞にカプサイシン刺激を行うと、ミトコンドリア障害が生じることを確認するためにミトコンドリア蛍光染色と電子顕微鏡観察を行った。カプサイシン投与量依存性に染色されるミトコンドリアは減少しており、さらに電子顕微鏡像では低用量カプサイシン刺激ではミトコンドリア膨化を、高容量カプサイシン刺激ではミトコンドリア破壊像が確認された。同時にオートファジー発生のマーカーである微小管関連蛋白質 (microtubule-associated protein)LC3のウエスタンブロットではカプサイシン用量依存性にオートファジー誘導が生じていることが明らかとなった。Mitophagy (オートファジーによってミトコンドリアを除去する現象)が生じているミトコンドリアを染色する蛍光色素で染色したところカプサイシン刺激によってmitophagy発生が亢進していることも明らかとなったため、カプサイシン刺激によって生じた損傷ミトコンドリアをmitophagy誘導によって除去しようという機序が働いているものと推察された。一方、マウスのwhisker padに10 mMカプサイシンを含むパッチを30分間作用させてTRPV1刺激を6日間行った。刺激と同側の三叉神経節の切片を作成して電子顕微鏡でミトコンドリアの観察を行った。なお、三叉神経節採取のタイミングは2, 4, 6日間投与完了の24時間後とした。2日投与では特に形態異常は認めなかったが、4日投与では主として小型の三叉神経ニューロンで内部構造の破壊を呈したミトコンドリアが確認された。しかし、6日間投与後にはニューロン内のミトコンドリア形態はほぼ正常であった。以上のことから、何らかの修復機構が作動するものと考えられた。
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