研究課題/領域番号 |
26460709
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
芦高 恵美子 大阪工業大学, 工学部, 教授 (50291802)
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研究分担者 |
伊藤 誠二 関西医科大学, 医学部, 教授 (80201325)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | NIPSNAP1 / ミトコンドリア / マイトファジー / 炎症性疼痛 / 糖尿病性神経因性疼痛 |
研究実績の概要 |
疼痛制御ペプチド・ノシスタチンの結合分子として細胞膜とミトコンドリアに存在するNIPSNAP1を同定し、細胞膜NIPSNAP1とノシスタチンによる疼痛制御を明らかにした。他方、NIPSNAP1のオートファジー関連分子との会合、NIPSNAP1欠損マウスでのノシスタチン非依存的な炎症性疼痛の慢性化を見出している。本研究では、ミトコンドリアNIPSNAP1に着目し、ミトコンドリアのオートファジー(マイトファジー)の制御、疼痛慢性化との関連に焦点をあて、ミトコンドリアの品質管理に基づく疼痛慢性化の制御機構を解明する。 本年度は、NIPSNAP1欠損マウスの後根神経節の初代培養細胞を用い、ミトコンドリア脱共役剤CCCPにより誘導されるマイトファジーについて解析した。野生型細胞でのミトコンドリアとリソソームの共局在数は、CCCP添加後6時間で7倍、24時間で2倍に増加した。その上昇はNIPSNAP1欠損により抑制された。オートファジー関連分子のp62とLC3のドッド数は、未処理のNIPSNAP1欠損細胞で2倍の上昇が見られた。NIPSNAP1欠損によりマイトファジーが抑制されることが明らかとなった。 また、NIPSNAP1欠損マウスでは炎症性疼痛の増強が認められたが、末梢組織の浮腫、ケモカイン産生、マクロファージの浸潤には差がなく、脊髄後角のERKのリン酸化が上昇した。NIPSNAP1は炎症反応の亢進ではなく中枢性制御に関与することが示唆された。一方、オートファジーと糖尿病との関連が報告されていることから、糖尿病神経因性疼痛について解析したが、NIPSNAP1欠損マウスの疼痛は野生型と有意差はなかった。さらに、NIPSNAP1が神経因性疼痛で見られるアロディニアへの関与することから、脊髄後角におけるアロディニア発症機構としてJNKとMCP-1による経路を解明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、ミトコンドリアNIPSNAP1による(1)ミトコンドリアの動態、(2)ミトコンドリアのオートファジー(マイトファジー)制御、(3)疼痛慢性化との関連を明らかにすることである。 (1)と(2)の NIPSNAP1によるミトコンドリアの動態とマイトファジーの制御に関しては、今年度は、NIPSNAP1欠損細胞を用い、CCCP処理の経時的な解析とオートファジーの選択的基質であるp62とその結合分子のLC3のドッド形成の解析を主に行った。その結果、NIPSNAP1欠損によりオートファジー不全を引き起こしていることが示唆され、NIPSNAP1がマイトファジーの制御分子であることが明らかになった。 (3) NIPSNAP1による疼痛慢性化との関連に関しては、NIPSNAP1欠損マウスによる炎症性疼痛モデルと糖尿病モデルを作製し疼痛解析を行った。疼痛慢性化は、糖尿病性神経因性疼痛では見られず、炎症性疼痛に特異的であった。NIPSNAP1の疼痛制御選択性が認められたことより、NIPSNAP1がアロディニア制御にも関与していることから、アロディニア発症機構を明らかにした。また、炎症性疼痛の慢性化の制御ポイントは、末梢組織の炎症反応の亢進ではなく、脊髄後角の中枢性感作機構であることが明らかとなった。疼痛モデルにおけるオートファジーとの関連の発現変化については、免疫組織染色とReal-time PCRで解析を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
(1)と(2)の NIPSNAP1によるミトコンドリアの動態とマイトファジーの制御に関しては、さらにNIPSNAP1欠損細胞や高発現細胞において、蛍光タンパク質を融合したマイトファジー検出プローブによるマイトファジーについて解析する。また、マイトファジー関連分子との相互作用、オートファゴソームとリソソーム融合分子との相互作用などを解析し、NIPSNAP1のマイトファジー制御ポイントを明らかにする。 (3) NIPSNAP1による疼痛慢性化に関しては、NIPSNAP1欠損マウスを用い、オートファジー誘導分子や制御分子の薬剤を投与し、疼痛解析を行うことにより、NIPSNAP1、オートファジー、慢性疼痛との関連を明らかにする。さらに、疼痛モデルにおけるオートファジーとの関連の発現変化については、今年度も継続して免疫組織染色とReal-time PCRで解析を行い、マイトファジー分子の発現と疼痛との関連を明らかにする。
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