研究課題/領域番号 |
26460714
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
宮本 直樹 北海道大学, 大学病院, 助教 (00552879)
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研究分担者 |
高尾 聖心 北海道大学, 大学病院, 助教 (10614216)
清水 伸一 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50463724)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 動体追跡放射線治療 / 呼吸性移動対策 / 呼吸位相 |
研究実績の概要 |
腫瘍の近傍に留置された体内の金属マーカを利用する待ち伏せ照射は、呼吸性移動をともなう肺癌などの放射線治療に応用されている。しかし、現状のシステムでは、呼吸により運動する体内マーカの3 次元位置のみをモニタしており、呼吸位相(呼気や吸気) を考慮していない。本研究では、治療計画とは異なる呼吸位相での待ち伏せ照射を防ぎ、治療の効率と精度を向上させる目的で、体内マーカの3 次元位置の時系列情報から呼吸位相をモニタする方法を開発し、実用レベルの完成度を目指す。治療の高精度化に加え、正確で再現性の高い位置合わせも実現できるため、治療時間を短縮できることから、患者への負担も低減できると考えられる。 平成27年度の研究実績の概要を以下に示す。 1.呼吸位相評価アルゴリズムの動作検証と改良 平成26年度に開発した呼吸位相モニタの基本アルゴリズムに対し、不規則な運動を検出する安全機構を加えて動作検証を実施し、蓄積した呼吸運動のログデータを用いて呼吸位相を評価した結果、評価した呼吸位相の整合性がとれていることを定性的に検証した。得られた成果の一部を2015年4月の第109回医学物理学会学術大会にて報告した。また、動体ファントムで呼吸運動を再現するための制御ソフトウェアの作成を開始した。開発した動体ファントムを治療システムのコミッショニングに応用し、得られた成果の一部を2015年7月の米国医学物理学会にて報告した。 2.呼吸運動のカテゴライズと治療効率の解析 体内マーカの追跡データ、治療に関するログデータ、およびX 線画像データをひもづけて管理するためのデータベースを構築し、解析環境を整備した。治療を通じて得られた複数マーカの運動ログを利用し、体内マーカを利用した動体追跡治療の照射効率および照射精度の評価を実施し、2015年10月の米国放射線腫瘍学会にて報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基本的に申請時の実施計画に沿った研究開発を進めており、ほぼ想定通りの結果を得ていることから、現在までの研究開発の達成度は、おおむね順調に進んでいると自己評価した。平成27年度の主な成果としては、①呼吸位相評価アルゴリズムの改良および動作検証、②解析用データベースの構築、の2点である。アルゴリズムの改良においては、不規則な呼吸性移動を検出する機能を加えた。これにより、不規則な呼吸性移動を検出した場合は、安定するまでビームの照射指示をOFFにすることで、より安全な呼吸同期照射が可能になると考えられる。また、解析のために新たに複数マーカの運動データを扱うこととし、動体追跡治療の効率と精度の評価をこれまでにない時間/空間分解能で実施できる環境を整備した。現時点までで得られた成果を、国内外の学会にて報告したところである。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、提案手法の治療における実用性と有効性を評価する目的で、以下のことを実施する。 ・平成26年度から継続して開発した呼吸位相評価アルゴリズムの有効性に関して、患者位置決めの再現性の向上、治療時間の短縮効果などを、治療ログを利用して定量的に評価する。 ・初年度から実施していた治療時のデータ(マーカ追跡データ、X線透視画像)収集に加えて、平成27年度から開始した複数マーカの追跡データも継続して実施し、呼吸同期照射の精度の解析に応用し、呼吸同期照射におけるマージンの最適化について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
陽子線動体追跡治療で得られる画像データ量が、3TB/月程度と大きく、さらなる容量増加が必要となってきたため、予定していた動体ファントムのハードウェア部分については、既存装置を応用することを考え、本研究で必要となる動きを再現させるためのソフトウェアを開発することで、当初目的を達成できる動体ファントムを製作した。動体ファントム製作用に計上していた予算を、データ保存システムの強化に充てることとした。そのための費用増額、およびデータ保存用サーバーの導入を検討しているところであり、具体的な導入は最終年度としたため、次年度使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
旅費、備品の主な使途と時期を以下に示す。(1)情報収集の目的で、4月に横浜で開催される医学物理学会へ参加するための旅費、(2)成果発表を目的として、11月に京都で開催される放射線腫瘍学会へ参加するための旅費、(3)画像データ保存用の大容量データ保存システムを上半期に導入。
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