研究課題
腫瘍の近傍に留置された体内のマーカを利用する待ち伏せ照射は、呼吸性移動をともなう肺癌などの放射線治療に応用されている。しかし、現状のシステムでは、呼吸により運動する体内マーカの3 次元位置のみをモニタしており、呼吸位相を考慮していない。本研究では、治療計画とは異なる呼吸位相での待ち伏せ照射を防ぎ、治療の効率と精度を向上させる目的で、体内マーカ3 次元位置の時系列情報から呼吸位相をモニタする方法を開発した。平成28年度は、提案手法の有効性を定量的に評価するために、肺の動体追跡X線治療で得られた30名のマーカ軌跡ログのうち、3次元の移動量が5 mm以上のデータを対象とし、実際の治療時の位置決め(以降 manual setup)と、提案手法を用いた位置決め(以降 4D setup)による照射効率を比較した。30名から得られた442例のログに対する評価の結果、4D setup における照射効率の平均値は、いずれのゲートウィンドウサイズ(マーカ待ち伏せ領域)においても、manual setup と比較して向上した。また、ゲートウィンドウサイズ±1mmにおいては、照射効率が約10%から20%に向上しており、臨床で許容可能な照射効率を維持しつつ、照射精度を向上できる可能性が示された。解析で得られた成果の一部を2016年9月の医学物理学会学術大会にて報告した。また、体内マーカを利用したゲーティング照射では、照射時におけるターゲットとマーカの位置関係の変動が重要となるため、治療中の体内における複数のマーカ運動の再現性について評価し、2016年11月の日本放射線腫瘍学会学術大会にて報告した。臨床データを用いた評価を通じて、提案技術により正確で現性の高い位置合わせをおこない、照射効率の向上および治療の高精度化を実現できることを示した。以上のことから、実用レベルの完成度を達成したと判断する。
すべて 2016
すべて 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)