研究課題
1.はじめに:大気micro-PIXE法を用いた多発性骨髄(MM)細胞株内の微量元素測定法の確立と検討を行った。2.対象と方法1)使用細胞:骨髄腫細胞株:KMS-112)方法:KMS-11をプロテアソーム阻害剤であるBortezomib 終濃度0nM、20nM、50nMにて24時間処理を行った。細胞を洗浄後、4~8×103個/μLの濃度に再懸濁する。集細胞遠心装置にて、浮遊液50μLを500rpm、15分遠心し、0.5μm厚のポリカーボネート膜細胞を接着させ、液体窒素にて-150℃に冷却したイソペンタンに沈め真空蒸着させた。分析試料を大気micro-PIXE分析チャンバーに装着し、KMS-11MM細胞内微量元素を解析した。3. 結果:細胞濃度は細胞の大きさにもよるが、4~8×103個/μL程度で良好な細胞密度が得られた。KMS-11MM細胞株では、S・Kが細胞全体に比較的均一に分布していたのに対し、Pは核に高濃度で分布していた。Fe・Cu・Znなどの微量金属元素は明らかな分布が同定されなかった。Bortezomibによる処理では、0nMを100%とした場合それぞれ20nMは97.3%、50nMは38.6%の生存率であった。それぞれの濃度で各元素を比較したところ、P・S・Kおよび微量金属元素ではBortezomibの濃度による差は認められなかった。Caは50nMでは他の濃度では認められなかったCaの核内への分布集積が認められた。4. 結語:浮遊細胞であるMM細胞株KMS-11のmicro-PIXE用試料作成法を開発した。集細胞遠心装置を用いることによって、in vitroにおいて様々な薬剤が添加されたMM細胞株の微量元素を、micro-PIXE法にて測定することが可能となった。Bortezomibの添加では、50nMの濃度でCaの核内への分布が観察された。
2: おおむね順調に進展している
多発性骨髄腫細胞株は浮遊細胞であり、接着性が乏しく、マイラー膜へ上への細胞固着が非常に困難であったが、集細胞遠心装置(サイトスピン)を使用することで克服できた。さらに、治療薬による骨髄腫細胞株内の微量元素の動態観察を行うことにも成功した。
現在まで、プロテアソーム阻害薬であるボルテゾミブ添加による微量元素の動態を観察してきたが、今後は、他の化学療法薬剤の添加による測定を行い、薬剤作用機序や耐性獲得の解明に結び付けたい。
浮遊細胞である骨髄腫細胞株のPIXE測定法の開発に時間がかかったため、抗腫瘍薬はbortezomibのみの検討に留まったため、細胞株培養液、各種サイトカインの購入を行わなかった。また、患者骨髄細胞の検討数が少なかったためCD138抗体等の購入額が少なかった。以上より、使用額が減じた。
4種類以上の骨髄腫細胞株、および患者骨髄細胞における検討を行うため、培養液、各種サイトカイン、骨髄腫細胞分離用抗体等に研究費を使用する。
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