研究課題/領域番号 |
26460722
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
大久保 真樹 新潟大学, 医歯学系, 教授 (10203738)
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研究分担者 |
和田 真一 新潟大学, 医歯学系, 教授 (80105519)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | X線CT装置 / 変調伝達関数(MTF) / 点広がり関数(PSF) / 空間分解能 / 肺がん / コンピュータ支援診断(CAD) / CT検診 |
研究実績の概要 |
我々はこれまでに空間分解能に基づいたCT画像のコンピュータシミュレーション技術を開発してきた。本研究では、この技術を胸部CT画像における肺内結節に応用し、結節シミュレーション画像を臨床画像に融合させた“Virtual Nodule”としての利用を考案する。昨年度(研究初年度)は、ファントム人工結節を用いた基礎実験により、Virtual Noduleの生成技術の確立およびその精度検証を行った。その結果、Virtual Noduleが人工結節と同等の精度でCADの検出実験に適用できることを明らかにした。 今年度の実績として、胸部CT検診で得られた臨床画像を用いてVirtual Noduleの有用性を検討した。結節シミュレーション画像を単純加算処理により臨床画像へ融合した。臨床画像における雑音成分が結節シミュレーション画像に加わることによって、画像の特性(空間分解能および雑音)を反映した、より真の結節像(症例画像)に近いVirtual Noduleが得られることが確認された。 次に,Virtual NoduleをComputer Aided Detection(CAD)システムに適用し検出実験を行った。高濃度(CT値)の大きいVirtual Noduleの検出率は高く、低濃度の小さいVirtual Noduleの検出率は低くなった。これは、一般的なCADシステムにおける結節検出特性と同様であり、CAD検出実験におけるVirtual Noduleの妥当性が示唆されるものと考えられた。また、真の結節像と類似したVirtual Noduleを選択しCAD検出実験を行った。その結果、すべてのVirtual Noduleが真の結節像と同じ検出結果を示すことが確認された。 以上の検討を通し、考案するVirtual Noduleの基本的な性能および有用性を確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では、昨年度(研究初年度)にCT装置の空間分解能を測定し、Virtual Noduleの生成技術の確立、およびファントム人工結節との比較によるVirtual Noduleの精度検証を完了する。そして今年度は、肺がんCT検診で得られた臨床画像を用いた検討に移行し、様々な大きさや濃度のVirtual Noduleを用いてCADシステムによる検出実験を行う予定であった。いずれの年度においても、各項目についての研究が順調に進められた。 現在までに、生成されたVirtual Noduleは、基にした臨床画像の特性(空間分解能および雑音成分)を反映した真の結節像(症例画像)に近いものとなることが示された。CADシステムによる結節検出実験において、一般的なCADシステムにおける基本的な検出特性と同様な特性も確認された。実験に用いたCADシステムは、直径5 mmで約-700 Hounsfield Unit(HU)以上の濃度をもつ結節を検出する確立は高いが、直径4 mmの小さな結節を検出するためには、高い濃度(約-400 HU以上)であることが必要とされるのがわかった。また、真の結節像と類似したVirtual Noduleを用いたCAD検出実験では、Virtual Noduleの検出結果(真陽性または偽陽性)が真の結節像と同じであることが示された。考案するVirtual Noduleの基本的な性能および有用性を確認することができた。期待通りの良好な結果が得られており、当初の計画通りの進捗状況である。
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今後の研究の推進方策 |
臨床画像に融合されたVirtual Noduleを活用し、結節の大きさや濃度によって異なるCADシステムの結節検出性能を詳細に検討する。そのための一手法として、種々の結節の直径と濃度における検出可否(真陽性/偽陰性)を表すマップを考案する。これを利用することによって、CADで検出可能な結節の最小径と最小濃度の関係を定量的にとらえられる。既に今年度の解析結果から、数例での傾向は把握できている。次年度には例数を増加させ、精度の高い真陽性/偽陰性マップを作成する計画である。さらに、偽陽性のデータを用いた受信者動作特性(Receiver Operating Characteristic;ROC)解析によりCADの総合的な性能を明らかにする予定である。 Virtual Noduleの特徴の一つとして、臨床画像における肺野内の任意の位置に融合させることができる。肺野内の構造物(血管や胸壁など)とVirtual Noduleとの位置関係を変えて、CADの結節検出能を調べる計画である。一般に血管に近接した結節の検出は困難とされているが、近接の程度とCADの検出能を定量的に評価した報告はない。Virtual Noduleを利用することにより、このような検討も実現可能となることを立証する。 CADの性能はCT撮影・画像再構成条件に大きく依存するため、条件設定によっては性能が大きく低下する場合もある。Virtual Noduleは、それぞれの検診施設におけるCT装置の空間分解能に基づいて生成され、その施設で得られたCT画像に融合される。これをCADの性能評価に適用することによって、各施設の撮影・再構成条件下でのCT画像に対応した性能評価が可能とする。これは従来のCAD性能評価法では実現できなかったものである。このようなVirtual Noduleの有用性や利点を明確に示していく。
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