研究課題/領域番号 |
26460725
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
小野口 昌久 金沢大学, 保健学系, 教授 (30283120)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 心臓動態ファントム / 心電図同期心筋SPECT / SPECT/CT装置 / 減弱補正 / 心機能 / 心筋血流 / 心電図同期CT撮影法 / 被ばく線量 |
研究実績の概要 |
心電図同期心筋SPECT (以下,Gated SPECT) において,現在,心機能指標の評価に使用されている心臓動態ファントムは外側(心外膜,内膜)の大きさが固定で内側(内腔)のみが前後方向に移動する構造であるため,本来の心臓の動きが再現していないことが指摘されていた。本研究では心筋および左室容積を可変できる心臓動態ファントムを新しく開発し,その構成と特徴,およびGated SPECTで算出した各種心機能指標の精度を検討することを目的とした。本ファントムは機動部と心臓部から成り,心臓部は縦隔を想定したアクリルタンクの中に心臓を想定した特殊二層ゴムを装着する。その特殊二層ゴムと心筋,左室容積用の2つのシリンダーを使用し,心筋壁厚が動きとともに変化する心臓動態ファントムを考案した。さらに,本ファントムのGated SPECT撮像を施行後,心機能解析プログラムを用いてLVEF(左室駆出率),EDV(最大拡張末期容積)およびESV(最大収縮末期容積)等の心機能指標を算出し,さらにその理論値と実測値を比較した。その結果,本ファントムは各シリンダーのストロークを変化させることで心筋部および左室容積が可変可能となり,同時に心拍数も3~164 bpmまで変化させることができる。また,解析結果の三次元表示により,各心筋壁のwall motionや部分容積効果を評価することができた。実測値と理論値間の相対誤差は,各ストロークでばらつきが生じた。実測値と理論値間でばらつきがみられた要因として,理論値は左室の容積変化のみを計算したものであり,心筋の容積変化による作用を反映できないこと,ゴムとアクリルとの摩擦によるゴムの収縮率の影響の二点が考えられ,今後改良の余地がある。今回,新たに心筋および左室容積を可変できる心臓動態ファントムを開発し,各心機能評価および本ファントムの特徴を明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の研究計画は,新型心臓動態ファントムの開発および動作確認である。 これまで,予備的な研究で使用されていた市販の核医学専用心臓動態ファントムは,心臓の構造をもとに作成されているが,外側(心筋外膜,中膜,内膜を想定)の大きさが固定で内側(心腔を想定)のみが前後方向に移動する構造であるため,本来の心臓の動きが再現できていないことが指摘されていた。平成26年度では,企業との共同研究が迅速に進み,心臓動態ファントムの外側(心筋外膜,中膜,内膜を想定)と内側(心腔を想定)の動きを本来の心臓の動きに近い心臓動態ファントムが9月に構築できたため,それに付随した予備基礎実験や臨床機による動作確認,心機能評価の検証を順調に進めることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
平成27年度では,1)一体型SPECT/CT装置のX線CT画像とSPECT画像間の位置合わせ(レジストレーショ)の精度評価,すなわち本心臓動態ファントムの心拍数を変化させ,一体型SPECT/CT装置における心電図同期X線CT撮影およびSPECT収集と,心電図非同期X線CT撮影およびSPECT収集を施行し,X線CT画像とSPECT画像の位置ズレを評価する。2)心電図同期で実験を行うことにより,1心拍の心電図波形に対応したX線CT画像とSPECT画像を作成し,画像の位置ズレを評価する。次に,一体型SPECT/CT装置のX線CT画像による減弱補正の精度評価として,1心拍の心電図波形を分割し,各々のX線CT画像から減弱補正用画像(減弱補正用マップ)を作成後,それに対応したSPECT収集データに減弱補正を行い精度を評価する。3)医療機器間ネットワークのCT画像による減弱補正の精度評価検査室が別のX線CT装置で,心臓動態ファントムの心拍数を変化させ,X線CT撮影を施行し,ネットワークで心電図波形に対応したX線CT画像を一体型SPECT/CT装置の解析装置に転送し,減弱補正をそれに対応したSPECT収集データに行い,精度を評価する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度の使用項目は,物品費(心臓動態ファントム開発費)および旅費(成果発表)であり,ほぼ達成することができた。次年度の使用額については,心臓動態ファントムの開発に要する初期経費が予定より安価で納品されたため,次年度の経費に計上することとした。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度の旅費の一部として使用予定である。
|