本研究では心筋および左室容積可変型のGated SPECT用心臓動態ファントムを開発し,Gated SPECTにより算出されたEDV,ESVおよび左室駆出率(LVEF)などの各心機能指標値の評価を行い,その実用性を検証する。 当ファントムの心臓部は,心内膜と心外膜を同時に可変させるため二層構造の伸縮可能な特殊ゴムで構成される。機動部は心筋,左室容積用の2つのシリンダーを装備したダブルポンプ式を新たに採用し,EDV 346-447 mL,ESV 246-346 mLおよびLVEF 0-45%まで可変できる。 低エネルギー高分解能型コリメータを装着したSPECT-CT装置を用い,心拍数,収集時間,R-R間隔を変化させ,画像再構成にはフィルタ補正逆投影法(FBP法)および逐次近似法(3D-OSEM法)を用いた。Gated SPECT施行後,QGS解析プログラムにて心機能指標値を算出した。 理論値-SPECT,SPEC-CTおよび理論値-CTの関係は,有意に強い相関がみられたことから算出値は理論値を反映していると考える。心拍数の違いによる各心機能指標値に有意差はなかったことから,一定心拍数では心機能指標値に影響を与えないと考えられる。心筋カウント変化による大きな差はみられなかったことから心機能指標値に影響を及ぼさないことが示された。16分割では8分割に比しEDVは高値,ESVは低値を示し,結果的にLVEFは高値を示した。画像処理フィルターの検討では,遮断周波数が低いと左室容積が過小評価された。画像再構成の違いでは,FBP法に比し3D-OSEM法がEDV,ESVで高値を,LVEFで低値を示した。装置間の比較では,理論値および算出値間で有意な強い正の相関を示したが,装置間差がみられた。今後ファントム作成時の容積の再現性をより高めることにより,心機能指標値の標準化が期待できると思われる。
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