研究課題/領域番号 |
26460729
|
研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
齋藤 秀敏 首都大学東京, 人間健康科学研究科, 教授 (50196002)
|
研究分担者 |
清水 森人 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計測標準研究部門, 研究員 (20613988)
河内 徹 千葉県がんセンター(研究所), 放射線治療部, 医学物理士 (10594393)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 水吸収線量計測 / 電離箱線量計校正 / 標準計測法 / 線質変換係数 / 外部放射線治療 / 光子線 |
研究実績の概要 |
産業技術研究所において、平成26年度にリニアックX線による水吸収線量標準が確立された。このことから、水吸収線量標準の確立による放射線治療領域の線量評価の不確かさ低減を目的として、「リニアックX線による水吸収線量標準と実現可能な線量トレーサビリティ体制」「電離箱の形式ごとに計算で与えられた現在の線質変換係数の不確かさ評価」「リニアックX線による水吸収線量校正定数をりようした水吸収線量計測法」の各項目に関する問題解決を本研究課題の目的とした。 平成27年度は前年度の研究を継続して、リニアックからの6、10、15 MVのX線ビームによる水吸収線量標準を利用して、4種類の電離箱線量計について水吸収線量校正定数決定の実験を行った。この結果から、計測による線質変換係数を算出し、公称の電離箱壁材質および形状から計算により決定されて線質変換係数と比較した。複数の電離箱線量計を利用して、同一形式での線質変換係数の分布についても検討した。 また、フラットニングフィルタフリー(フラットニングフィルタを使用しない照射)におけるエネルギースペクトルについて、位置、深さ、照射野による変化をコンピュータシミュレーションにより求め、その線質変換係数を計算により決定した。 さらに、コバルト60γ線による水吸収線量標準で校正された電離箱線量計を使用した第三者評価の結果を分析して、リニアックX線による水吸収線量校正による電離箱線量計を使用した場合のユーザ施設での線量計測で生じる不確かさの推定を行い、その改善策を検討した。 これらの結果については、国内学会に2演題の演題申請、国内学術誌へ1編の論文投稿を行った。また、国際学術誌へ1編投稿するための準備を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「電離箱の形式ごとに計算で与えられた現在の線質変換係数の不確かさ評価」、「リニアックX線による電離箱線量計校正を利用した新たな水吸収線量計測法提案」のための計測による線質変換係数の決定とその不確かさ評価など、研究計画調書で記述した平成27年度までの実施項目がおおむね達成できている。さらに、フラットニングフィルタフリー(フラットニングフィルタを使用しない照射)におけるエネルギースペクトルからの線質変換係数算出など新たな研究項目についても着手でき、学術大会への演題申請、学術論文の作成、投稿など、研究成果発信を進めることができている。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究課題では、「リニアックX線による水吸収線量標準による実現可能な線量トレーサビリティ体制」の提案を研究目標の一つとして挙げている。この項目を実現するためには、電離箱線量計の校正事業を行う二次線量標準機関でリニアック施設を所有し、リニアックX線による照射実験でユーザ施設の個々の電離箱線量計に対して水吸収線量校正定数、線質変換係数を与える必要があるが、経済的に大きな障壁がある。 このことから本研究の最終目標は、コバルト60γ線による電離箱線量計校正とリニアックX線による電離箱の形式ごとの線質変換係数を使用した水吸収線量計測法の提案が最善となり、これに向けて今後研究を継続する方針である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究では電離箱線量計の購入を計画していたが、研究の進捗の状況からその仕様を決める必要があった。また、海外学術大会への参加費が予定より高額だったこと、実験条件をリニアックに設定するための委託が必要であり予想外の支出があったため、これまで購入を控えてきた。以上の理由から、相当額の次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
他の支出計画を見直し購入可能であるとの予想がついたので、平成28年度において当初予定の支出額で電離箱線量計1本を購入する予定である。
|