研究課題/領域番号 |
26460732
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
原 秀剛 北里大学, 医療衛生学部, 助教 (80381424)
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研究分担者 |
村石 浩 北里大学, 医療衛生学部, 講師 (00365181)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 急性期脳梗塞 / Dual-energy CT / 仮想単色画像 / 被曝線量 / 人体ファントム |
研究実績の概要 |
わが国における死亡率原因の第4位及び寝たきりになる原因の第1位は脳血管疾患(脳卒中)であり,日本は特に脳出血が多い国として有名である.近年は食生活の欧米化や生活習慣病が増加し脳梗塞が問題視され,今なお予防管理の重要な疾患である.我々は脳卒中及び脳腫瘍の画像診断支援法の確立をめざし,疾患検出のための画像処理やX線CTによる描出能及び撮影条件評価を目的にファントム開発を継続的に行ってきた. 平成27年度においては,脳模擬ファントムによるDual-energy CT撮像手法の開発及び線量測定用人体頭部ファントムによる被曝線量測定について主に研究を行った. Dual-energy CT装置の特徴として,2つのX線管球と検出器を有しているため,1回転(1撮影)で異なるEnergy(管電圧)の2画像を同時に得ることができる.我々はこの特徴に着目し,高エネルギー画像と低エネルギー画像のデータから,仮想単色画像(Virtual Monochromatic Imaging)を作製し,急性期脳梗塞および転移性脳腫瘍等の低コントラスト領域の描出能をCNRにより検討し,80kV/Sn140kV,100kV/Sn140kV,及び140kV/80kVの各最適エネルギーを算出した.Virtual Monochromatic Imaging(仮想単色画像)上の最適エネルギーは68keV,72keV,67keV,脳梗塞部の検出には100kV/Sn140kV,140kV/80kVが適していた。 さらに,線量測定用人体頭部ファントムを用いて眼窩部から頭頂部までの6 断面上に熱ルミネセンス線量計(TLD)を挿入して被曝線量を測定した結果,600mAsでは120kV時と比較して80kV/Sn140kV,100kV/Sn140kV,及び140kV/80kVで各々約47%,約30%,約22%の線量低減が可能であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Dual-energy CTによるVirtual Monochromatic Imaging(仮想単色画像)に着目し,急性期脳梗塞を検出するための最適なエネルギー約70keVを明らかにした。また,被曝線量測定から通常撮影の撮影条件に比較して,Dual-energy CTでは線量を約20から50%低減できることも初めて明らかにした。 特に我々の研究では,脳に近似した脳梗塞模擬ファントム及び線量測定用ファントムを独自に開発し,それらによる画像評価及び線量測定を行う環境を整えることで,より実際の撮影条件下にて実験できたことが大きい。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までの研究成果により,X線CTでは描出困難とされてきた急性期脳梗塞等の低コントラスト域の描出の可能性が明らかになり,この手法の描出精度を向上させることで,脳梗塞においては,アルテプラーゼ(t‐PA)使用による血栓溶解療法の適応判断を行える可能性が考えられる。 次年度以降は,異なる画像データ収集方法のDual-energy CTによるVirtual Monochromatic Imagingの検討および新しい画像再構成法として期待される逐次近似画像再構成法を搭載したX線CTによる画像評価を主に行う予定である。また,この逐次近似画像再構成時の被曝線量測定も行い,X線被曝低減の可能性についても明らかにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際会議出席時の旅費及び宿泊ホテルの連泊により、差額が生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の旅費に充当予定。
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