研究課題/領域番号 |
26460733
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
鈴木 一史 東京女子医科大学, 医学部, 准講師 (70366342)
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研究分担者 |
阿部 香代子 東京女子医科大学, 医学部, 准講師 (00318049)
飯村 浩 東京女子医科大学, 医学部, 放射線技師 (20737374)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | CT perfusion / 低線量 / 被曝 |
研究実績の概要 |
1、実際のファントムの設計と並行して、デジタルファントムによる実験と検証を行った。デジタルファントムは実際のCTスキャンを行わずに、データを血液動態理論に沿って算出し、これを解析するシミュレーターのような技術であり、研究分担者である飯村が中心となってこれを完成させた。結果として、CT perfusionが提供する各種の指標の中でも、定量性に差があることがわかった。また、低線量条件下におけるコントラストも指標により差があることがわかった。この結果は、北米放射線学会に発表した。現在は論文を英文誌に投稿中である。 2、ファントムの設計と製作、ファントムを用いることのメリットの一つである理論的真値の算出を行った。これは後述のファントム実験のデータの結果を評価する基準として重要である。この内容は日本放射線技術学会雑誌に掲載された。 3、ファントムを作成してスキャン線量を下げていった場合の定量性を検証し、1.と同様の結果を得た。CT perfusionが提供する各種の指標の信頼性や意味には差があり、この結果は臨床的に再灌流療法の対象となる虚血性ペナンブラの診断基準に影響すると考えられる。この成果の一部を日本神経放射線学会で発表し、現在は論文を英文誌に投稿中である。 4、低線量を実現する方法としては、1.や3.で用いたように単純にCTスキャンの管球線量を下げるだけではなく、スキャンの時間間隔を延ばす方法があり、その定量性をファントムを用いて検証した。この成果は日本放射線技術学会で発表した。論文は英文誌にの査読を通らなかったため、再投稿の準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ファントムの設計と製作、ファントムの構造や主要諸元、設計上の理論的数値の算出は完了し、日本放射線技術学会雑誌に掲載された。 ファントムを用いた低線量条件下におけるCT perfusionの主な実験は完了した。実験においては当初は想定していない困難などもあったが、創意工夫を重ねた結果、おおむねデータの収集が可能となった。 主要な実験内容は学会発表を済ませており、現在は英文誌に論文を投稿する段階であるが、査読者とやり取りしながら最終的にrejectされる結果になることが多く、予想外に時間がかかっている。現在、1件がmajor revisionについて査読中、1件が査読中、1件がreject後に再投稿の準備中である。これらの投稿のための英文校正にも費用がかかっており、最終的にacceptされるまでは費用が発生する可能性が高いため、研究期間の延長を行った。
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今後の研究の推進方策 |
論文の発表が遅れている点は研究者の語学能力に責任があるものであり、投稿支援サービスや英文校正サービスを利用してできる限り迅速にacceptされるように努力している。 本研究で作成したファントムは様々な応用が可能と考えられる。現時点で検証が可能だが実際には着手していない検討項目として以下の2点がある。 (1)注入条件を変更したときの病変描出能の変化。これは先行するデジタルファントムで一定の傾向は出ているが、ファントムで実際に検証することに意義がある。実験データを新たに収集する必要があるため、設定する条件などを検討中である。 (2)CT perfusionに関わる新しい技術として、逐次近似再構成法やベイズ法アルゴリズムなどがある。いずれもCT perfusionのさらなる低線量化が可能となると予想されている新しい技術だが、その有用性についての定量的な評価が十分に行われていない。本研究で完成させたファントムはその検証に応用が可能である。さらに、検証の内容によってはすでに収集したデータを処理しなおすだけでもいい場合があり、具体的な方法について検討している。 研究期間を1年延長しているので、可能であればこれらも成果を出せるように努力したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
前述の通り主要な実験は完了しているが、準備した論文の多くが査読中であり、今後も英文校正にある程度の費用がかかると予想している。このため、残額を次年度における論文投稿の準備に用いるものである。
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次年度使用額の使用計画 |
追加でいくつかの検討項目があることから、実験の追加のための消耗品などの雑費、学会発表の費用、それらの論文投稿のための英文校正費用などが必要となる可能性があり、次年度における支出が必要と考えられる。
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