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2015 年度 実施状況報告書

新規ビタミンE誘導体の放射線防御薬としての創製研究

研究課題

研究課題/領域番号 26460734
研究機関東京理科大学

研究代表者

稲見 圭子  東京理科大学, 薬学部, 講師 (00271247)

研究分担者 望月 正隆  東京理科大学, 薬学部, 教授 (10072414)
研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワードビタミンE / ラジカル捕捉 / 電子効果 / 6-クロマノール
研究実績の概要

がん放射線治療が増え続けるなか、放射線による副作用が原因で治療を継続できなくなることがある。放射線による副作用の多くは、正常な組織に損傷を与えることであり、放射線防護効果をもつ化合物を創製することは重要な課題である。本研究では活性酸素を消去する化合物に着目し、生体内に存在するビタミンEの構造に基づき、6-クロマノール類を化学修飾することにより、放射線防御剤の候補化合物の開発を目指す。
今年度は、細胞への適用を考慮し、高いラジカル捕捉作用のほかに化合物の安定性に着目し、8-位に置換基を導入した6-hydroxy-2,2-dimethylchroman化合物を創製した。合成した化合物について、有機溶媒中でガルビノキシルラジカルに対する捕捉作用を測定し、2次反応速度定数を算出した。その結果、NHCH3 > NH2 > ビタミンE > OCH3 > CH3> NHCOCH3 > Cl> NO2の順となった。従来の結果と同様に、電子供与性の高い置換基を有する化合物ほどラジカル捕捉活性が上昇することが明らかになった。また、高い電子供与性置換基であるNH2基、NHCH3基を有する化合物は、ビタミンEの6倍、13倍も高いラジカル捕捉活性を示した。
8位置換体のラジカル捕捉活性が上昇した理由について、量子化学計算プログラム(Gaussian 09)を用いて、合成した化合物の構造を解析した。計算から得られた最も安定なコンホメーションのphenoxyl radicalについて、ヘテロ環の各結合の二面角を得た。8位に置換基を導入することでヘテロ環の各二面角に影響を与えるが、置換基の種類による二面角への影響に違いはなかった。以上より、8位置換体のラジカル捕捉活性の上昇には、構造の平面性は関係なく、導入した置換基の電子効果にのみ依存することを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

ビタミンE類縁体として、種々の置換基を導入した6-クロマノール類を合成し、有機溶媒中におけるラジカル捕捉活性への置換位置および置換基の影響を明らかにすることができた。さらに、細胞を用いた評価系を検討するために、化合物の安定性にも着目して新規ビタミンE類縁体をデザインしたところ、安定でかつビタミンEよりも高いラジカル捕捉作用をもつ化合物を合成することができた。しかし、ESRによる水溶液中でのラジカル捕捉作用の評価に至っていない。反応条件等の設定に時間がかかっていることと、活性評価のたびに化合物を合成する必要があることが原因である。

今後の研究の推進方策

1)これまでに合成した化合物について、ESRを用いて水溶液中のラジカル捕捉作用を測定する。
2)26年度および27年度の結果に基づいて、より強力な新規ビタミンE類縁体として芳香環を拡大したビタミンE類縁体を考案し、引き続き、新規抗酸化剤の合成を継続する。
3)新たに合成した化合物の有機溶媒中および水溶液中でのラジカル捕捉作用を評価する。
4)細胞(RAW細胞、ラット胸腺細胞)を用いて活性評価する。RAW細胞では化合物の毒性を検討する。ラット胸腺細胞を用いた抗酸化剤のスクリーニング系で評価する。活性が得られた化合物の物理化学的な性質に基づいて、構造活性相関を検討する。

次年度使用額が生じた理由

前年度の未使用額を本年度に使用したためである。

次年度使用額の使用計画

試薬などの消耗品として使用した。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (6件)

  • [雑誌論文] Antioxidant activity of ascorbic acid analogs containing a nitrogen atom in the ring2016

    • 著者名/発表者名
      S. Nomura, K. Inami, M. Mochizuki.
    • 雑誌名

      Heterocycles

      巻: 92(4) ページ: 680-687

    • DOI

      10.3987/COM-16-13410

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Radical scavenging activity of ascorbic acid analogs containing a carbonyl conjugated ene-diol structure2015

    • 著者名/発表者名
      S. Nomura, K. Inami, M. Mochizuki.
    • 雑誌名

      Heterocycles

      巻: 92(1) ページ: 86-101

    • DOI

      10.3987/COM-15-13366

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Effect of alkyl group on transnitrosation of N-nitrosothiazolidine thiocarboxamides2015

    • 著者名/発表者名
      K. Inami, Y. Ono, S. Kondo, I. Nakanishi, K. Ohkubo, S. Fukuzumi, M. Mochizuki.
    • 雑誌名

      Bioorg. Med. Chem.

      巻: 23 ページ: 6733-6739

    • DOI

      10.1016/j.bmc.2015.09.008

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Transnitrosation of non-mutagenic N-nitrosoproline forms mutagenic N-nitroso-N-methylurea2015

    • 著者名/発表者名
      K. Inami, J. Shiino, S. Hagiwara, K. Takeda, M. Mochizuki.
    • 雑誌名

      Bioorg. Med. Chem.

      巻: 23 ページ: 3297-3302

    • DOI

      10.1016/j.bmc.2015.04.058

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 新規抗酸化性benzochromanol類の置換基導入によるラジカル消去活性への影響2016

    • 著者名/発表者名
      岡山 祐大, 稲見 圭子, 望月 正隆.
    • 学会等名
      日本薬学会 第136年会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県)
    • 年月日
      2016-03-27 – 2016-03-29
  • [学会発表] 五員環を維持したアスコルビン酸類縁体のラジカル消去活性と酸化電位2016

    • 著者名/発表者名
      野村 昌吾, 稲見 圭子, 望月 正隆
    • 学会等名
      日本薬学会 第136年会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県)
    • 年月日
      2016-03-27 – 2016-03-29
  • [学会発表] Selective formation of S-nitrosoglutathione from N-nitrosothioproline analogues2015

    • 著者名/発表者名
      稲見 圭子, 望月 正隆
    • 学会等名
      第74回 日本癌学会総会
    • 発表場所
      名古屋国際会議場(愛知県)
    • 年月日
      2015-10-08 – 2015-10-09
  • [学会発表] 5員環状アスコルビン酸類縁体のラジカル捕捉活性と酸化電位2015

    • 著者名/発表者名
      野村 昌吾, 稲見 圭子, 望月 正隆.
    • 学会等名
      第59回日本薬学会関東支部大会
    • 発表場所
      日本大学薬学部キャンパス(千葉県)
    • 年月日
      2015-09-12
  • [学会発表] 6-Chromanol類の8位置換体の合成と抗酸化活性評価2015

    • 著者名/発表者名
      鈴木 真梨子, 稲見 圭子, 望月 正隆
    • 学会等名
      第59回日本薬学会関東支部大会
    • 発表場所
      日本大学薬学部キャンパス(千葉県)
    • 年月日
      2015-09-12
  • [学会発表] Benzochroman骨格をもつ新規抗酸化剤の合成と活性評価2015

    • 著者名/発表者名
      岡山 祐大, 稲見 圭子, 望月 正隆
    • 学会等名
      第59回日本薬学会関東支部大会
    • 発表場所
      日本大学薬学部キャンパス(千葉県)
    • 年月日
      2015-09-12

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公開日: 2017-01-06  

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