研究課題/領域番号 |
26460735
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研究機関 | 広島国際大学 |
研究代表者 |
羽根田 清文 広島国際大学, 保健医療学部, 准教授 (30280192)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 粒子線治療 / ラジカル / ゲル線量計 / モンテカルロシミュレーション |
研究実績の概要 |
本研究は、放射線照射により生ずる水分子由来ラジカルの重合反応の測定が可能なゲル検出器による実測データとモンテカルロシミュレーションによる計算とを組み合わせることによりラジカル生成量を定量的に測定・評価し、それらの結果からLET値と再結合ラジカル発生率の関係および再結合ラジカルによる細胞致死効果の増強に関する機序解明を試みるものである。 研究2年目である本年は、昨年度に引き続き粒子線治療でも比較的生物学的な影響を受けやすく実測における定量的変化の測定の困難な陽子線治療についてラジカル挙動を用いた機序解明を試みた。 昨年度に開発した陽子線施設で使用されている物理線量の把握およびそれを理論的に解析可能とする計算モデル(モンテカルロシミュレーション:Phits code)の継続使用し、その計算結果における物理量とLET値変化によるラジカルとを考慮することによりラジカル発生率の変化に対応したモデルへと改良を行いより、化学的影響を考慮したモデルへと改良を行った。その結果より実測に近似した値を計算モデルにて得ることが可能となった。一方、本モデルでは細胞レベル(マイクロドシメトリ)の平均値計算モデルであるため、放射線生物学的影響の主原因であるDNAへの直接的な障害発生とのズレが確認されている。その為、現在計算モデルをより実環境に近づけるため細胞レベルによる計算モデルからDNAレベル(ナノドシメトリ)の計算モデル(Geant4-DNA)への変更を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ゲル線量計の測定結果と計算モデルを利用することにより研究当初想定していた計算精度(誤差10%)よりも精度の高い計算モデル作成の可能性が得られた。この結果は当初の予定より研究の進行に寄与した。一方本高精度計算モデルを使用するためにはより詳細なシミュレーションが必要となるため1シミュレーションに要する計算時間が数か月単位となり計算モデルの確定までに時間を要する可能性が生じたためトータルとしては順調な進行と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画では平成27年度中に陽子線照射による計算モデルを作成し、そのモデルを基盤とした炭素線治療に関するラジカル量測定手法の開発を行う予定であった。しかし、上記進捗状況にて記したように研究を進めることにより当初想定した計算精度より、より高精度の測定手法の開発の可能性が得られた。そこで本研究では平成28年度も継続して陽子線治療における計算モデルの改良を行うことにより、高精度測定法の開発を行いたい。なお、本モデルは、現在炭素線治療にて問題となっているブラッグピーク前の低LET領域への適応が可能と考えられるため本計算モデルの精度向上は結果として研究目的である粒子線治療の精度向上に寄与すると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究報告書に記したように、平成28年度の研究内容を当初は炭素線治療に関するラジカル量測定手法の開発を行う予定であり、その関係機器を購入予定であった。しかし、陽子線治療モデルの継続研究へと変更した為、必要器具に変更が生じた、本変更が年度末と重なり必要器具の購入期限を過ぎてしまった為、来年度購入となりそのため次年度への繰り越し金額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
計算精度を向上に伴う計算時間の増加を軽減するために更に計算機を購入する予定である。
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