研究課題/領域番号 |
26460736
|
研究機関 | 広島国際大学 |
研究代表者 |
林 慎一郎 広島国際大学, 保健医療学部, 准教授 (20238108)
|
研究分担者 |
前山 拓哉 独立行政法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, 基礎科学特別研究員 (70612125)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | ポリマーゲル線量計 / ホウ素中性子捕捉療法 / BNCT / MRI / 熱中性子 / 熱外中性子 / ガンマ線 / シミュレーション |
研究実績の概要 |
2014年度は,ゲル線量計をホウ素中性子捕捉療法(BNCT)における吸収線量評価に応用するための基礎データ収集を目的とし,原子炉からの中性子線に対するその基礎的応答特性と微量のホウ素10(10B)を添加した場合の応答への影響,及びその深部応答分布について調べた。 用いたゲル線量計はモノマーとしてメタクリル酸を用いた,通称MAGATと呼ばれる標準的な組成と,それにホウ酸(B(OH)3) を25mM (10B of 50 ppm) 添加したものを作製して用いた。作製したゲルは容器の放射化の影響を避けるため石英ビーカー(φ65mm, 300mL)に封入した。中性子照射は京都大学研究炉(KUR)重水中性子照射設備で[熱中性子(Thermal)]と[熱外・速中性子(Epi-thermal and fast)],および[それらの混合(mixed)]の3種類のエネルギースペクトルの照射モードを用いて行った。照射後,応答特性は1.5T MRIを用いてT2緩和速度(R2=1/T2)から評価した。 その結果,10Bを含まない場合,熱中性子に対する応答は深部へ向けて単調な減少を示した。これは一般的な熱中性子の減衰に対応している。また熱外・速中性子に対してはブロードなピークが見られ,減速した熱中性子に対応していると考えられる。また,10Bを含む場合は吸収が浅部へシフトしており,実際の治療レベルのホウ素濃度でも10Bによる中性子捕捉の寄与が確認できた。この結果はシミュレーションによって得られる深部線量分布と相関が見られた。また,原子炉および核反応から生じる低線量率ガンマ線のゲル線量計の応答への影響を調べるために60Co線源を用いて線量率依存性も調べ,RIからの連続ガンマ線に対する線量率依存性は極めて小さいことが示された。 これら結果は第8回3次元線量計測国際会議(Sweden)にて報告した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
使用する中性子源として京都大学原子炉実験所の原子炉(KUR)を用いる計画である。 2014年度は4月と5月にホウ素原子の有無による応答特性を調べる照射実験は行うことができた。この結果は9月に開催された国際会議(IC3DDose2014)で発表することが出来た。 しかし6月以降、検査のため原子炉の運転が停止され、その後稼働が再開されず、予定していた後半の実験が出来なかった。そのため、初年度に計画していた元素組成(窒素や各種添加物)を変化させて応答特性を調べる実験が出来なかった。
|
今後の研究の推進方策 |
まずは2014年度に行うことの出来なかった [1] 線量(率),[2] 元素組成・添加物によるゲル線量計の応答特性,を優先的に調べる。この結果に対し,モンテカルロシミュレーションを行い,中性子線のエネルギー成分,およびガンマ線の分別が可能かどうかの評価を行う。その後,ゲル線量計を大型化して線量応答の3次元分布の評価も行い,他の検出器(金箔やTLD)との比較を行う。 また,組成を変化させた場合のゲルの基礎特性(線量(率)や積算性など)はコバルト線源からのガンマ線を用いて調べる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
照射用中性子源として使用を予定していた京都大学原子炉実験所の原子炉(KUR)が検査が長引き,年度後半に再稼働されず実験が出来なかった。これにより購入を予定していた石英試験管などの高額な容器を購入できなかったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
2015年度、原子炉の再稼働とともに容器を購入し,2014年度に実施できなかった実験を行う。
|