ポリマーゲル線量計材料の母材には電子線架橋ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)ゲルを、放射線検出液にはメトキシエチルメタクリレート(MEMA)等のメタクリル酸エステルモノマーと脱酸素剤を含む水溶液を用いて、厚さ2mm程度のシート状ポリマーゲル線量計材料を作製した。作製したシート状ゲル線量計材料の線量応答性を評価した結果、炭素線の線量率が高いほど吸光度は減少し、感度が低下した。実際の炭素線治療で用いられる線量率(5 Gy/min程度)では、感度が低かったことから、モノマーの種類や脱酸素剤の濃度等の条件を最適化することで感度を約3倍にまで向上させた。その結果、高線量率でも2 Gy程度の治療線量を検出可能な材料を作製できた。また、作製したシート状ゲルを石英ガラス容器内に積層し、3次元線量分布評価用の立体型ポリマーゲル線量計材料を作製した。サンプルの中央付近が炭素線のブラッグピークになるよう、10 mm x 10 mmの照射野で炭素線を4方向から照射した結果、透明なサンプルの中心部分に白濁領域の形成を視認できた。白濁したシート状ゲルをガラス容器から取り出し、市販のPC用フラットスキャナにより画像データ化し、吸光度(線量)を算出することで、各シートの2次元吸光度(線量)分布を評価した。さらに、積層したそれぞれのシート状ゲルの吸光度分布データを画像処理ソフトの活用により、3次元に再構築することで、空間的な線量分布を評価することができた。
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