研究課題/領域番号 |
26460741
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
村松 正明 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (50230008)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ゲノム疫学 / 遺伝子・環境の相互作用 / 遺伝子多型 |
研究実績の概要 |
個人が自分のコモンバリアント(SNP)による疾患易罹患性を知ることのリスクとベネフィットを東京大学医科学研究所・先端診療部との共同研究の元でアンケート調査・解析・研究した。コモンバリアントのみに基づく60余の疾患のリスク結果回付を経験ある医師が実施することによって、協力者が自分で疾患の発症・進展をより良くコントロールできるようになるというエンパワーメント効果が観察されることを見出した(”Effective communication along with personal genome profiling: Utility of DNA testing with careful explanation and family history taking” として論文投稿中)。パーソナルゲノムは患者と医師の間の優れたコミュニケーション・ツールとなり得て、今後予防医療推進及び両者の新しい関係の基盤となり得るという感触を得ている。またコケージャンを対象として、同様のアンケート調査を行って、その結果の解析を進めている。一方、日常的慢性疾患のリスク遺伝子が多数同定されているが、罹患率の高い心疾患である心房細動に関するコモンバリアント研究を行った。GWASで同定されたZFHX3遺伝子多型を高齢者剖検例によるフェノーム解析を行うと、心房細動との関連が再現されたのみならず、脳梗塞、肺塞栓との相関も見られた。これらのことは病態同士あるいは遺伝子と病態の新しい関係を見出すのにフェノーム解析が有用であることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年の夏に教室全体の移転があったため、実験系の一部遅れがあったが、それ以外はほぼ順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今回行ったのはパイロット研究(n=20)であり、今後更にパーソナルゲノム情報をどのように予防医療に活かしていくか、規模の大きな社会医学研究を展開する必要があると考えられる。またパーソナルゲノム情報にはコモン及びレアバリアント情報があるが、次世代シークエンサーによって容易にレアバリアントも読み取れるようになった。この中には本人の健康状態に重要なものも含まれている。最近、米国臨床遺伝ゲノム学会では全ゲノム解析(WGS)あるいは全エクソーム解析(WES)において見出される偶発的所見についての見解を表明し、56個のアクショナブルな遺伝性疾患の遺伝子(ACMG56)については本人への情報開示を推奨している。このような結果を回付する研究も必要になってくるものと思われる。
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次年度使用額が生じた理由 |
28年度内に教室全体の移転があり、約3ヶ月間実験系がストップしたため、経費の使用が遅れた。
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次年度使用額の使用計画 |
29年度内の早期に予定していた実験系に経費を使用する予定である。
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