【背景と目的】ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症は代表的な性感染症である。HPVは男性の癌(中咽頭癌、肛門周囲癌、陰茎癌など)の原因ともなり、男性でのHPV感染予防も重要である。本研究では、男性でのHPV感染予防対策の立案、感染者の有効なフォローアップ体制の確立を目指す。 【結果】尿路感染症症状があるベトナム人男性計495名から、尿/尿道ぬぐい/陰茎ぬぐい/口腔洗浄検体を採取し、6か月ごとのフォローアップを実施した(観察期間 中央値は14.8か月、Inter quartile range 14か月)。2回以上採取した161名のうち116名の検体解析(検体内訳:尿116検体、陰茎ぬぐい116検体、尿道ぬぐい115検体、口腔87検体)が終了した。全観察期間を通して、44名(37.9%)がHPV陰性であり、72名(62.1%)が1回以上の検体でHPVが陽性であった。 HPV遺伝子型の検出頻度は、検体採取部位により異なるが、検出頻度の高い遺伝子型はHPV6、11、18、33、51、54、58、81型であった。また、口腔検体では、HPV16型が10.0%、HPV18型が40.0%から検出された。 HPV陽性であった72名のうち、全観察期間を通してHPV陽性が持続したものは27名(37.5%)、HPVが陰性化したもの25名(34.7%)、HPVを獲得したものは14名(19.4%)、一過性のHPV感染が見られたものは5名(6.9%)であった。 【結論】ベトナムでは尿路感染症の症状を経験した男性の62.1%でHPV感染が見られ、また37.5%において、1年以上のHPV持続感染が見られた。HPV11型の検出頻度がもっとも高かった。ベトナムにおいて、若い男性に対するHPV6/11/16/18型の4価ワクチンを導入する有用性が示唆された。
|