研究課題
(1) 心房細動発症データベースの更新: 福岡県久山町では1961年以降,時代の異なる複数の追跡集団(コホート)を構築し,心房細動を含む心血管病の発症および死亡についての追跡調査を行っている.本年度も昨年度に引き続いて各コホートの対象者に対する健診およびアンケート調査を実施し,新規の心房細動発症に関する追跡調査を行った.そのデータを統計解析に用いるデータベースに追加し更新を行った.(2) 心房細動発症のリスク予測モデルの開発: 1988年の健診を受診した40歳以上の男女のうち心房細動の既往のない2628名を14年間追跡した成績を用いて,心房細動発症の危険因子を探索した.多変量解析の結果,高齢,男性,コレステロール低値,肥満,心雑音,心電図異常が心房細動発症の独立した危険因子であることを確認した.さらに,これらの因子を用いたリスク予測モデルを作成した.(3) 血清高感度CRPレベルと心房細動発症の関連: 1988年の健診を受診した40歳以上の男女のうち心房細動の既往がなく,また血清高感度CRP濃度を測定し得た2505名を19年間追跡した成績を用いて,高感度CRPレベルと心房細動発症との関連を検討した.高感度CRPを4分位に分けて検討した結果,高感度CRPの最低値群(第1分位)を基準とした最高値群(第4分位)の多変量調整後のハザード比は1.63と有意に高く,また対数変換後の高感度CRPの1標準偏差上昇あたりの多変量調整後のハザード比も1.12と有意に高かった.つまり,慢性炎症の指標である高感度CRPレベルの上昇は心房細動の独立した危険因子であることが示唆された.
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http://www.hisayama.med.kyushu-u.ac.jp/