研究実績の概要 |
癌罹患と包括的地理要因との関連を検討するために、長崎県内を2,208の小地域(町丁・字)に分割し、小地域別の癌の粗罹患率を計算し、癌罹患の小地域集積性を検討した。また、重回帰分析により、癌罹患率と包括的地理要因との関連を評価した。 ①癌罹患率の地域集積性 罹患率算出の基礎となる小地域を、初年度に検討した町丁・字を一部修正したものに再変更し、30歳以上の人口を属性データに持つ地図を作成し、2005~2011年の癌罹患例(62,645)の住所情報から、全癌および主な臓器別の小地域別癌罹患率を算出し、地図上に分類表示し、癌罹患の小地域集積性を検討したところ、全癌で南島原市と西海市、肺癌で五島市、胃癌と結腸癌および乳癌で南島原市、肝臓癌で壱岐市と南島原市、前立腺癌で島原市の一部の小地域で罹患率が高かった。特に、壱岐市東部で肝臓癌、南島原市の中西部で結腸癌、南島原市の東南部で乳癌の小地域集積性が認められた。 ②癌罹患率と小地域地理要因との関連 前年度までに作成した長崎県内の地理要因のデータ(医療機関やゴミ焼却施設など位置情報、標高と大気汚染物質および気象観測値)を利用して、小地域ごとの密度または平均値を算出し、①で算出した小地域別の癌罹患率と地理要因データとの関連を統計解析ソフトSASの重回帰分析を利用して評価したところ、大気汚染物質では、窒素酸化物濃度が全癌および胃癌と前立腺癌、オキシダント濃度が全癌および肺癌など4部位の癌罹患率との関連を示唆する結果が得られた。気象観測値では、年間降水量が全癌および胃癌と前立腺癌、年間平均気温が全癌および胃癌など6部位の癌、年間平均風速が全癌および胃癌と前立腺癌、年間日照時間が全癌および3部位の癌罹患率との関連を示唆する結果が得られた。地理的要因では、内科医院の密度が高いほど、結腸癌と前立腺癌の罹患率が低くなっていた。
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