研究実績の概要 |
Guam島においてはかつてALSの多発集積がみられ,その後ALSの多発は消滅したが,PDC(Parkinsonism-dementia complex)および認知症の発症率が高いことが報告されている.K町は紀伊半島南部に位置する山間部地域であり,Guam島と同様,かつてALSの多発が観察されたが,現在ではALSやPDCの多発は確認されていない(Hironishi M, World Congress of Neurology, 2017, Kyoto).本年度は現在のK町においてGuam島のような認知症有病率の高さが見られるかどうかを確認した. K町のA,B,C,D,E各地区の65歳以上の住民1506人(全人口2898人)に対し,保健師の訪問によるDASC-21(地域包括ケアシステムにおける認知症総合アセスメント,粟田ら,老年精神医学雑誌 26: 675, 2015)を用いた全町認知症スクリーニング検査(DASC-21)を行った(調査対象住民中1272人(A地区486人,B地区236人,C地区86人,D地区153人,E地区311人)).DASC-21(カットオフ 30/31点)で31点以上の割合は,全町10.7%(高齢化率 52%),A地区9.9%(43.1%),B地区8.9%(49.8%),C地区16.3%(69.3%),D地区10.5%(59.1%),E地区12.7%(68.9%)であった. K町において高齢化率の高い地区で認知症有病率が高かったが,DASC-21によるスクリーニング検査による認知症有病率の高さは示されなかった. C地区は83戸の小集落であるが,同様な高齢化を示すE地区と比べて高い認知症有病率が認められた.今後はK町における個々の認知症患者の精査および,特にC地区に関して特有の要因がないかどうかを検討する必要がある.
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