研究課題/領域番号 |
26460754
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研究機関 | 県立広島大学 |
研究代表者 |
冨田 哲治 県立広島大学, 経営情報学部, 准教授 (60346533)
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研究分担者 |
佐藤 健一 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 准教授 (30284219)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 原爆被爆者 / がん死亡危険度 / 2次的放射線被曝 / 空間変化モデル / 時間変化モデル |
研究実績の概要 |
放射線被曝はがん等の罹患・死亡のリスクを高める要因であり,その影響を定量的に評価することは重要な課題である.広島原爆被爆者における放射線を被曝したことに起因するがん罹患および死亡のリスク評価は,主に原子爆弾が炸裂時に放出された放射線による直接的な外部被曝の影響評価がほとんどであり,残留放射線による外部被曝や放射性物質で汚染された塵や水などを体内に取り込んだことによる内部被曝など,直接被曝以外の付加的な放射線曝露の影響は評価されていないのが現状である.間接被曝に関するリスク評価がほとんど行われていない理由の一つとして,間接被曝による被曝線量を推定することは難しく,被曝線量に基づく評価法では解析することができなかったことが挙げられる.本研究では,被曝線量に基づく従来のリスク評価法に代わる新しい評価法として,被爆時所在地毎にがん等による罹患・死亡のリスクを空間評価する方法を開発し、リスクの地域差をモデルに導入する。また、原爆被爆者におけるによる発がんは、被爆後から一定期間が経過した後にリスクが増大する傾向があり、この時間変化もモデル化する。これら地域差と時間変化を組合せたリスク評価法を開発することで、原爆被爆者におけるがん死亡危険度の時間変化する地域差を地図に描くことで、初期線量の影響では説明できないリスクを明らかにし、2次的な放射線被曝の影響について検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の計画内容は、(1)空間変化モデリングのための理論開発と整備、(2)時間変化モデリングのための理論開発と整備、(3)時空間変化モデリングのための理論開発と整備、の3点であった。(1)については、がん死亡危険度の地域差について柔軟に対応するための基底としてスプライン関数を導入した。スプライン関数による過剰適合を制御するためのチューニングも組み込んだ。(2)については、がん特有の年齢依存性や被爆時年齢の影響などを数理モデルで構築し、モデル化を行った。(3)については、(1)と(2)を組み合わせることで、時間変化する地域差を解析するための方法を開発した。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、理論開発と整備を進めつつ、原爆被爆者コホートデータの解析のための準備も同時に進める。データ解析のために、今年度は次の2点について研究を進める。(1)前年度開発した解析法を実装した解析プログラムの開発、(2)解析データの管理・整備。(1)については、医学・心理学および社会科学データの解析に対して評価の高いIBM社のSPSSや近年データサイエンス分野でよく使われている統計ソフトRなどを用いて解析プログラムの開発を進める予定である。(2)については、ABSデータベースに登録されている広島原爆被爆者から、解析対象となるコホート集団として、1970年1月1日の時点で生存していた広島県内居住者を設定し、その後の転出などの移動、固形がんによる死亡について追跡する。追跡終了時点は、現段階で整備が完了しているのは、2010年12月31日までであるが、2011年以降についても整備を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
投稿中論文の学術雑誌への掲載が次年度になったため、その論文掲載費や別刷印刷費などの費用が次年度使用額として生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度の研究成果として学術雑誌への掲載が決定した論文の掲載費や別刷印刷費について使用を予定している。
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